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福岡から国東半島へ – 美食を求める旅の始まり
福岡市内から車を走らせ、九州自動車道に乗ります。まず目指すのは北九州JCT。ここで東九州自動車道へ入り、大分方面へと進んでいきます。
高速道路を駆け抜けるうちに、福岡の都市の風景は次第に遠ざかり、緑豊かな山々やのどかな田園風景が広がり始めました。東九州道は比較的新しい道路で、交通量も少なく、快適なドライブが楽しめます。
目的地に近づくため、宇佐ICで高速を降りました。
通常であれば、宇佐ICから最短ルートで山道を抜ける道があるのですが、前日に降った雪の影響で通行が推奨されていないとのこと。目的地は険しい山道の先にあるため、安全を優先し、遠回りにはなりますが海沿いのルートで向かうことにしました。
ここから先は一般道を走りながら、国東半島へと向かうルート。宇佐の街を抜け、少しずつ海沿いの景色が増えてくると、旅の気分はさらに盛り上がります。
立ち寄ったスポット – 真玉海岸「恋叶ロード」
目的地へ向かう途中、せっかくならと真玉海岸に立ち寄ることに。
ここは「日本の夕陽百選」にも選ばれた絶景スポットで、「恋叶(こいかな)ロード」の一部でもあります。
このエリアには、カップルや家族連れにも人気の映えスポットが点在しています。特に有名なのがゆうひテラスと、ポツンと佇むどこでもドア風のオブジェ。まるで異世界へとつながるかのような、不思議な雰囲気を醸し出していました。
海を眺めるベンチも設置されており、寄り添う二人や、ゆったりと過ごす家族の姿が見られました。冬の澄んだ空気の中、水平線に広がる穏やかな海と、どこまでも続く干潟の風景が、心を落ち着かせてくれます。
今回の旅では立ち寄りませんでしたが、真玉海岸の近くには気になるお店があります。
それが「SOBA CAFE ゆうひ」です。
「日本の夕陽百選」に選ばれた絶景を眺めながら、本格的な手打ち蕎麦を楽しめるカフェで、特に夕暮れ時には、海に沈む夕陽を眺めながら食事ができるため、ロマンチックな時間を過ごせると評判です。
蕎麦以外にもスイーツやカフェメニューが充実しており、ふらっと立ち寄るのにもぴったりな場所。旅の途中でのんびりと休憩するには最適でしょう。
今回はスケジュールの関係で訪れることができませんでしたが、次回はぜひ行ってみたいスポットのひとつ。国東半島の美食巡りの合間に、絶景と美味しい蕎麦を味わう時間を楽しむのも良さそうです。
真玉海岸でしばらく景色を楽しみ、少しゆっくりしてから、再び車を走らせました。遠回りの海沿いルートは、波の音を感じながらのドライブが心地よく、目的地へ向かう旅路そのものが特別な時間に思えてきます。
「海辺と珈琲 ことり」で、旅のひと休み
しばらく進むと、気になるカフェが目に入りました。それが「海辺と珈琲 ことり」。
店名の通り、海を眺めながら美味しいコーヒーが楽しめるお店です。
静かな雰囲気の中でハンドドリップのコーヒーを味わえるカフェで、木の温もりを感じる店内と、大きな窓から広がる開放的な海の景色が魅力的です。旅の途中にほっと一息つくにはぴったりの場所でした。
早く目的地へ近づいていたので、「海辺と珈琲 ことり」で一息つくことにしました。
店内に入ると、目を引く豆を炒る機械が。
入口で注文を済ませた後、靴を脱いでテーブル席に着きました。
海辺のカフェを後にして、国東町・来浦へ
「海辺と珈琲 ことり」を後にし、国東町・来浦(くのうら)へ向かいます。
海沿いの道から少し内陸へ進むと、風景は徐々に変わり、のどかな田園風景が広がり始めました。広々とした田んぼが連なり、その合間には歴史を感じさせるお寺が点在しています。
国東半島は、かつて六郷満山文化が栄えた土地でもあり、今でも多くの寺院や石仏が残る地域です。田んぼとお寺が並ぶ風景を眺めながら、静かで落ち着いた空気に包まれ、この土地ならではの時間の流れを感じました。
physis(ピュシス)に到着 – 温かなお出迎え
田園風景の中を進み、いよいよ目的地であるレストランに到着しました。
周囲は静寂に包まれ、国東半島の豊かな自然に溶け込むような落ち着いた雰囲気が広がっています。建物は古民家を改装したような趣のある佇まいで、シンプルながらも洗練された印象を受けました。
車を降りると、静かな空気に包まれたレストランの入り口が目の前に広がります。
すると、奥様が入口まで出迎えてくださいました。にこやかな笑顔と温かな雰囲気に、初めて訪れる場所でありながら、どこか安心感を覚えます。
ここから始まる特別な食のひととき。静かに期待が高まりながら、一歩足を踏み入れました。
ピュシスでの食事を終え、福岡方面へ帰路へ
素晴らしい食体験を終え、余韻に浸りながら福岡方面へ向けて出発します。
行きは海沿いのルートを選びましたが、帰りは違う道を通ることにしました。来るときは雪の影響を考慮して避けた山道ですが、想定より安全に通行できるとの情報を得たため、今回はその道を抜けて豊後高田市内へ向かいます。
昭和の町を散策 – 昭和30年代にタイムスリップ
最初に訪れたのは、豊後高田市の「昭和の町」。
ここは、昭和30年代の町並みを再現したレトロな観光スポットで、歩いているだけでまるで昭和の時代にタイムスリップしたかのような感覚に包まれます。
通りには、昔ながらの商店や木造の建物、レトロな看板が並び、懐かしさを感じる景色が広がっていました。駄菓子屋やレトロ雑貨店、純喫茶など、どこか温かみのあるお店が点在し、昭和の時代に親しまれていた文化を身近に感じることができます。
昭和ロマン蔵 – 昭和の町の魅力が詰まったレトロスポット
昭和の町を散策しながら立ち寄ったのが、「昭和ロマン蔵」。昭和の雰囲気をそのまま残した建物の中に、当時の暮らしを再現した展示や、懐かしい雑貨・玩具が並ぶミュージアムが広がっています。
昭和ロマン蔵では、複数の施設を楽しめる共通入館券が用意されています。
券種 | 対象施設 | 一般料金(大人) | 一般料金(小中高生) | 団体料金(大人) | 団体料金(小中高生) |
3館共通券 | 駄菓子屋の夢博物館、昭和の夢町三丁目館、チームラボギャラリー昭和の町 | 1,200円 | 840円 | 960円 | 680円 |
2館共通券 | 駄菓子屋の夢博物館、昭和の夢町三丁目館 | 900円 | 630円 | 720円 | 500円 |
チームラボギャラリー昭和の町(単館券) | チームラボギャラリー昭和の町 | 440円 | 300円 | 350円 | 240円 |
昭和の夢町三丁目館(単館券) | 昭和の夢町三丁目館(昭和の民家ゾーン) | 440円 | 300円 | 350円 | 240円 |
せっかく訪れたので「3館共通券」を購入しました。
最初に向かったのは「昭和の夢町三丁目館」。
ここでは、昭和30年代の町並みがリアルに再現されており、まるで当時にタイムスリップしたかのような空間が広がっています。
館内には、昔ながらの商店、理髪店、電器屋、郵便局などが軒を連ね、どこか懐かしさを感じる佇まい。建物の中には、当時実際に使用されていた家具や道具が展示されており、昭和の暮らしが細部まで再現されています。
路地を歩くと、昭和の家庭の茶の間がそのまま残されている一角もあり、レトロなテレビやちゃぶ台、黒電話などが並んでいました。畳の上に座ると、まるで昭和の時代に暮らしているような気分に。
昭和を知らない世代でも楽しめる工夫が施されています。館内を巡るうちに、昭和という時代がどんな空気感だったのか、じっくりと味わうことができました。
次は、「駄菓子屋の夢博物館」へと向かいます。
「駄菓子屋の夢博物館」へ
「昭和の夢町三丁目館」を満喫した後は、「駄菓子屋の夢博物館」へ。
ここは、日本最大級の駄菓子屋ミュージアムとも言われ、昭和の時代に親しまれていた駄菓子やおもちゃが、壁一面にぎっしりと並べられています。
入口を入ると、まず目に飛び込んできたのは、懐かしいブリキのおもちゃ、めんこ、ベーゴマ、ミニカーなどのコレクション。昔の子どもたちが夢中になったおもちゃが、ずらりと展示されており、まるで昭和の駄菓子屋をそのまま再現したような空間が広がっています。
さらに奥へ進むと、壁いっぱいに昭和の駄菓子のパッケージが並び、当時のデザインやキャラクターをじっくりと見ることができます。懐かしさとともに、駄菓子の歴史や進化を感じる展示が印象的でした。
また、館内には実際に駄菓子を購入できるコーナーもあり、昔ながらの駄菓子を手に取ることができます。昔の子どもたちが小銭を握りしめて駆け込んだ駄菓子屋の賑わいを感じながら、昭和の甘い思い出に浸るひとときでした。
「チームラボギャラリー昭和の町」 – デジタルアートで昭和の風景を体験
最後に訪れたのは、「チームラボギャラリー昭和の町」。
昭和の町の風景と最先端のデジタルアートが融合した、不思議な空間が広がっています。
このギャラリーでは、専用の紙に自由に男性や女性などのキャラクターを描き、スキャンすると、その絵がスクリーンの中で動き出します。背景には、夕焼けに染まる真玉海岸が映し出され、目の前には巨大な草原が広がっています。
スキャンしたキャラクターたちは、その草原の中を自由に歩き回り、他の人が描いたキャラクター(ピープル)とコミュニケーションを取りはじめます。スクリーンの中で、まるで生きているかのように交流する様子は、見ているだけでも楽しいものです。
さらに、キャラクターに触れてみると、驚いたようなリアクションをとったり、思いがけない動きをしたりと、インタラクティブな仕掛けが満載。
昭和の町並みとデジタルアート、そして伝統文化が交差する、新しい形の昭和体験を楽しむことができました。
宇佐神宮へ – 全国の八幡宮の総本社を訪れる
昭和の町を存分に楽しんだ後、次に向かったのは宇佐神宮。ここは全国に約4万社ある八幡宮の総本社であり、歴史と格式を誇る神社です。
駐車場に車を停め、境内へと歩いていくと、厳かな雰囲気が漂い、周囲の木々に囲まれた参道が心を落ち着かせてくれます。宇佐神宮は、広大な敷地を持ち、本殿へと続く長い石段や、美しい朱塗りの楼門が印象的な神社です。
宇佐神宮の境内は広大で、見どころが多数あります。初めて訪れる方は、事前に境内マップを確認されると、スムーズに参拝ができるかと思います。
宇佐神宮の公式ウェブサイトでは、境内散策マップを提供しています。このマップには、主要な社殿や施設の位置が詳細に記載されています。
また、宇佐神宮の歴史や周辺の見どころを紹介した「国宝 宇佐神宮 神仏習合の里散策マップ」も参考になります。このマップは、神宮周辺の史跡や文化財を巡る際に役立ちます。
参道を進むと見えてくるのが、立派な手水舎(ちょうずや)です。参拝前に手と口を清めるための場所で、清らかな水が絶えず流れています。
宇佐神宮の手水舎は、竹を渡した独特の構造が特徴的で、柄杓(ひしゃく)が整然と並べられています。この美しい佇まいが、神社の神聖な雰囲気をより一層引き立てています。
冬の冷たい水が肌に触れると、身が引き締まり、神聖な場所に来たことを改めて実感します。心を整えた後、いよいよ本殿へと向かいます。
宇佐神宮の本殿へと向かうには、長い石段を上る必要があります。
この階段は、まさに「神域」へと続く道。少し急な傾斜ですが、周囲の木々に囲まれ、空気が澄んでいるため、歩みを進めるごとに心が落ち着いていくような感覚を覚えます。
階段を上りきると、朱塗りの立派な門が現れます。ここが宇佐神宮の本殿の入り口です。格式ある造りの門をくぐると、一気に厳かな雰囲気が広がります。
本殿に到着
長い石段を上りきり、宇佐神宮の本殿に到着しました。本殿は国宝に指定されており、八幡造(はちまんづくり)という独特の様式で建てられています。
宇佐神宮の本殿には、「一の殿」「二の殿」「三の殿」の三殿が並んでおり、それぞれ異なる神が祀られています。
一の殿には、八幡大神(応神天皇)が祀られています。八幡大神は武運の神、国家鎮護の神として古くから崇敬され、多くの武将たちも参拝に訪れたとされています。
鮮やかな朱色の社殿が神聖な雰囲気を醸し出し、歴史の重みを感じさせます。お賽銭を納め、「二拝二拍手一拝」の作法でしっかりと参拝を行います。
静寂の中、神聖な空気に包まれながら、一の殿に手を合わせると、心が洗われるような感覚になります。この後、二の殿、三の殿へと足を進めます。
宇佐神宮の下宮へ参拝
本殿での参拝を終え、案内に従って下宮へ向かいました。宇佐神宮には「上宮」と「下宮」の二つの大きな神域があり、どちらも同じ御祭神を祀っています。
古来より「上宮」は国家の神、「下宮」は民衆の神として信仰されてきたそうです。そのため、「片参り」とならないように、下宮もお参りすることが推奨されています。
木々に囲まれた参道を進むと、厳かな雰囲気の下宮が見えてきます。上宮と比べるとやや控えめな佇まいですが、その静けさが心を落ち着かせ、より一層神聖な気持ちになります。
ここでもしっかりと参拝を済ませ、宇佐神宮での参拝を締めくくりました。歴史あるこの地に足を運び、改めて日本の神社文化の奥深さを感じるひとときとなりました。
皇族と宇佐神宮の関わり – 由緒ある歴史
宇佐神宮は、日本の皇室とも深い関わりを持つ格式高い神社です。
現在でも、皇族の方々が宇佐神宮を参拝されることがあり、その際には特別な神事が執り行われます。 歴史と伝統を受け継ぐ格式高い神社 として、皇室とのつながりは今もなお続いているのです。
宇佐神宮 仲見世通り – 参拝前後の楽しみ
宇佐神宮の参道には、風情ある 「仲見世通り」 が広がっています。ここでは、地元の特産品や伝統的な和菓子、名物グルメが並び、参拝前後に立ち寄るのにぴったりのスポットです。
蒸気機関車(SL)の展示
この蒸気機関車は、かつて実際に運行されていたもので、鉄道の歴史を感じさせる貴重なモニュメントとなっています。
宇佐市には、かつて 宇佐参宮線 という鉄道が走っており、これは戦前から戦後にかけて 宇佐神宮への参拝客 を運ぶ重要な路線として活躍していた鉄道です。
この蒸気機関車は、そんな時代の名残を今に伝えています。
宇佐神宮と宮本武蔵 – 剣豪が歩んだ歴史の足跡
宇佐神宮を訪れると、 宮本武蔵 にまつわる逸話が残されていることに気づきます。二天一流を創始した 剣豪・宮本武蔵 は、宇佐神宮とも深い関わりを持っていたとされています。
宇佐神宮は ただの観光地ではなく、長い歴史と人々の信仰が積み重なった特別な場所 でした。参拝を終えた後も、その余韻が心に残る、そんな体験ができたひとときでした。
参拝を終えて中津市へ – 城下町の歴史と美食を楽しむ
宇佐神宮での厳かな参拝を終え、次の目的地 中津市へと向かいます。宇佐神宮から中津市までは 車で約30分ほどの距離。
中津駅に到着すると、駅前には「学問のすゝめ」 で有名な 福澤諭吉の銅像が。
中津は、近代日本の礎を築いた 福澤諭吉の生誕地 としても知られています。駅前には、福澤諭吉を称えるモニュメントがあり、訪れる人々を迎えてくれます。
続いて向かったのは中津大神宮。この神社は伊勢神宮の御分霊を奉斎しており、「豊前の国のお伊勢様」として親しまれています。境内は広々としており、無料の駐車場も完備されています。
しかし、楽しみにしていた中津城は、リニューアル工事中のため休館しており、訪問することができませんでした。工事は2025年2月20日から4月上旬までの予定で、天守閣前に池や庭園を設け、日本一の「花城」として生まれ変わるとのことです。
中津城の再開を楽しみにしつつ、この旅の最後の目的地へと足を運ぶことにしました。
「味あら井」でのディナー – 中津の美食を堪能
中津での観光を終え、いよいよ予約していた「味あら井」へ向かいました。
「味あら井」は、ミシュラン一つ星を獲得した日本料理店で、地元・大分の旬の食材をふんだんに使用したおまかせコースを提供する名店です。カウンター席が中心で、大将の手仕事を間近で楽しめるのも魅力のひとつです。
旅を終えて – 美食と歴史に触れた特別な時間
今回の旅は、美食・歴史・文化 のすべてを存分に味わう、充実したものとなりました。
国東半島では、海沿いの絶景ドライブ や、こだわりのコーヒーを楽しんだ「海辺と珈琲 ことり」、そしてフランス料理の技と地元の食材が融合した「physis」での特別な食体験。遠回りの海沿いルートを選んだことで、思いがけず素敵な寄り道ができた のも、この旅の魅力の一つでした。
宇佐神宮では、全国の八幡宮の総本社という格式と神聖な空気 を感じながらの参拝。広大な境内を巡りながら、歴史の重みと伝統の深さに触れることができました。
中津では、福澤諭吉の生誕地 を訪れ、日本の近代化を支えた偉人の足跡を辿りながら、城下町ならではの歴史を感じました。残念ながらリニューアル工事中だった中津城ですが、次回は生まれ変わった姿を見てみたいと思います。
旅の締めくくりは、ミシュラン一つ星の「味あら井」でのディナー。大分の山海の幸を使った料理の数々は、食材の魅力を最大限に引き出した逸品ばかりで、最後の一皿まで余韻が残る素晴らしい時間となりました。
旅の途中で出会った風景、歴史、そして一皿一皿に込められた想い。ただ移動するだけではなく、そこにある文化や背景を知ることで、旅の記憶がより深く刻まれる ことを改めて実感しました。
また次の旅へ――今回の経験を胸に、新たな美食と歴史を求める旅を計画したくなりました。