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SEPTIME(セプティム)について
コンセプト
SEPTIMEは、サステナブルな哲学に基づき、自然との調和と創造性を融合させたガストロノミーを体現するレストランです。地元の有機農家や持続可能な漁法で獲れた素材を使い、余分な装飾を排したミニマルな料理の中に、静かで深い驚きを仕込みます。フロアとキッチンが一体となった空間では、ナチュラルワインと共に、人と人とが自然に交わるような流れが生まれ、食を通じて詩的な体験が広がっていきます。
Bertrand Grébaut(ベルトラン・グレボー)シェフ
SEPTIMEのオーナーシェフ、ベルトラン・グレボーは、フランス美術学校で建築やデザインを学んだ後、料理の世界へと転身し、アラン・パッサールの「L’Arpège」での修業を経て、その才能を一気に開花させました。わずか27歳でミシュラン1つ星を獲得し、2011年に自身のレストラン「SEPTIME」をパリ11区にオープン。以降、彼は“新しいフランス料理”を代表するシェフとして注目を集め、自然と誠実に向き合う料理哲学を実践し続けています。素材の力を最大限に生かし、過度な技巧や装飾を排して、味・香り・温度・質感といった本質的な要素に向き合う彼の料理は、まるで詩のような余韻を残します。
彼は「料理人はアーティストではなく、自然と人をつなぐ仲介者である」と語り、持続可能な食材の調達や廃棄ゼロの工夫、ナチュラルワインとの調和にも力を注いでいます。姉妹店としてカジュアルな海鮮ビストロ「Clamato」やナチュール専門のワインバー「Septime La Cave」も展開し、レストラングループ全体で一貫したサステナビリティの哲学を体現。2023年には『World’s 50 Best Restaurants』で22位にランクインし、2017年には最もサステナブルなレストランとして表彰されるなど、その姿勢と料理は国際的にも高く評価されています。ベルトラン・グレボーは、料理という表現を通じて、環境、感性、社会との新しい関係を静かに、しかし力強く提示する、現代フランス料理界の先駆者です。
レストランの評価
パリのレストランSEPTIME(セプティム)は、世界的な評価を受けています。2024年の「世界のベストレストラン50」では11位にランクインし、前年から順位を上げています。
ミシュランガイドにおいては、2024年版で1つ星を維持しています。 また、エコロジーへの取り組みが評価される「グリーンスター」も獲得しています。
さらに、旅行者からの評価も高く、口コミサイト「トリップアドバイザー」では1,072件のレビューが寄せられています。
これらの評価は、SEPTIMEが持続可能なガストロノミーと創造的な料理で、国内外から高い評価を受けていることを示しています。
ダイニングプレリュード
外観・エントランス
外観は驚くほどミニマルで、無機質なグレーのファサードに、店名“SEPTIME”が小さくガラス面にプリントされているだけ。派手なサインや装飾は一切なく、一見するとカフェかアートギャラリーのような静けさを湛えています。しかし木製のドアや大きな窓からは、店内の温かな光や生花の彩り、スタッフたちの穏やかな気配が感じられ、すでにこの空間が特別であることを予感させます。
扉を開けるとそこに広がるのは、木の温もりと鉄や石の無骨さが同居する洗練された空間。街の喧騒はすっと遠のき、素材の存在感と自然な接客が心地よく響き合います。SEPTIMEでは、食体験は皿の上から始まるのではなく、エントランスの前に立った瞬間から始まっているのです。
ダイニングスペース
SEPTIMEのダイニングスペースは、シンプルで静謐。手の温もりを感じる無垢の木材テーブルや、ろうそくのほのかな灯りが、空間全体にあたたかく柔らかな空気を漂わせています。器やカトラリー、グラス類もすべて計算され尽くしたものではなく、どこか「日常の上質さ」を感じさせるセレクションで、背伸びせずに洗練された時間を過ごせる空気が流れています。
ダイニングの中心には、まるで舞台のようなオープンキッチンがあり、料理人たちが淡々と、しかし真剣な眼差しで料理を組み立てていく様子が、そのまま“演出”となっています。厨房の境界には目立った仕切りがなく、木のカウンター越しにやり取りする声や、焼きの音、香りが自然に客席に溶け込むことで、空間全体がひとつの生きた作品のように感じられます。
壁一面の窓越しに見えるバーカウンターには、季節の草花やナチュラルワインがさりげなく置かれ、店全体に「時間の流れを静かに受け入れる」ような佇まいを与えています。過剰な演出や緊張感はなく、スタッフもゲストも同じ空気のなかでゆったりと呼吸しているような、そんな稀有な空間。SEPTIMEの料理が語りかけてくる“静かな物語”は、この空間と一体になって、より深く心に残る体験となっていきます。
メニュープレゼンテーション
SEPTIMEのメニューは、その一枚の紙からすでに物語が始まっているかのように、静かで洗練された存在感を放っています。黒縁のボードに挟まれたタイピング風の文字は、まるで詩のように最小限の情報だけを伝え、「今日」という時間と「春」という季節、そしてゲストの感性にゆだねるような余白を残します。コースは5皿からなるおまかせスタイルで、“Carte Blanche”の名の通り、料理の詳細をあえて語らず、目の前に届いた一皿ごとに小さな発見がある構成です。ワインとのペアリングも、ナチュラルワインを中心に静かに寄り添い、全体としてまるで一編の短編小説のように、流れるように体験が進んでいきます。派手な演出ではなく、自然と手仕事、そしてリズムのある余白によって構成されるこのプレゼンテーションこそが、SEPTIMEの哲学そのものであり、料理のはじまりを静かに告げる“最初の一皿”なのです。
実際に味わったお料理
ベジタブル・ブロス
最初に運ばれてきたのは、ジュニパーオイルを加えた野菜のブロス。 出汁スープです。
爽やかな香りと奥行きのある味わいが、口の中を静かにリセットしてくれます。
森を思わせる清涼感が広がり、 この一杯には、北欧的なエッセンスがやさしく溶け込んでいました。ここから、セプティムの静かで力強い世界が、ゆっくりと広がっていきます。
コンテチーズのグジェール(Gougères)
続いて提供されたのは、コンテチーズを使ったグジェール。小さく焼き上げられたひとくちサイズのシュー生地に、濃厚なコンテチーズソースをたっぷり。シンプルでありながら、フレンチの伝統をアレンジさせたものでした。軽やかな食感と豊かな余韻が、次の展開への期待を高めていきます。
熟成ジャージービーフのタルタル
つづく一皿は、熟成ジャージービーフのタルタル。 手長海老のコンソメジュレを添え、レモンとローズオイルで香りを重ねています。
華やかなエディブルフラワーが彩りを添え、 見た目にも鮮やかで、季節の恵みを感じるプレゼンテーション。
添えられたバゲットとともに口に運べば、 繊細な旨みとほのかな酸味、そして花の香りが重なり、ひとくちごとに異なる表情を見せてくれます。
イタリア・エミリア=ロマーニャ州の自然派ワイナリー「Podere Pradarolo(ポデーレ・プラダローロ)」によるオレンジワイン
クレソンとルッコラのヴルーテ
続いては、クレソンとルッコラのヴルーテ。
濃厚でありながらも軽やかな緑の香りが広がり、コースに新たな層をもたらします。
濃厚でありながらも軽やかな緑の香りが広がり、コースに新たな層をもたらします。
別皿でホイップクリームと、黒トリュフをスライスして載せた、ブリオッシュが登場。
それぞれを単体で味わい、最後にすべてを重ねて口に運んだとき、 混ざり合う香りと味わいに、言葉にならない余韻だけが静かに残りました。
この瞬間が、私にとってこの日のハイライトとなりました。
ホワイトアスパラガス
次に登場したのは、春の訪れを感じさせる一皿。
グリルで香ばしく焼き上げたホワイトアスパラガスに、 自家製エックスオージャンと、とりのグレービーソース。
マイヤーレモンの爽やかな酸味がアクセントとなり、 力強さと軽やかさが絶妙なバランスで共存しています。
いよいよ、メインディッシュとなります。
アンコウのロティ
登場したのは、アンコウのロティ。
しっとりと火入れされたアンコウに、炭火でグリルされたアンディーブ、さらにシードル、マスタードシード、そして薄くスライスしたラルドンを重ねた一皿。
ふくよかな旨みと香ばしさ、わずかな酸味とコクが幾重にも重なり合い、静かに力強い余韻を残していきました。
クレームアングレーズ
最後を締めくくるのは、シンプルながら奥ぶかいデザート。 マダガスカル産バニラをたっぷりと使った クレームアングレーズに、 ジュラ産サヴァニャンを使った芳醇なサバイヨン、 そしてヘーゼルナッツオイルを合わせた一皿です。
やわらかな甘みとほのかな酸味、ナッツの香ばしさが 静かに広がり、コースの余韻をやさしく包み込んでいきました。
まとめと感想
フランス料理のわくにとらわれず、北欧やアジア、地中海文化からもインスピレーションを受けながら、独自のモダンなスタイルを築いてきたセプティム。
皿の上には、静かで、力強い物語。控えめな見た目に反して、ひとくちごとに確かな存在感が広がっていきました。
この日はシェフ本人は不在でしたが、チームが見事にその世界観を体現し、忘れられないひとときを届けてくれました。
予約とアクセス情報
3週間前の現地時間10:00(フランス時間)から予約可能
(例:4月28日の予約 → 4月7日 10:00に受付開始)
住所:
80 Rue de Charonne, 75011 Paris, France
(パリ11区 シャロンヌ通り)
最寄駅:
Charonne駅(メトロ9号線) 徒歩約3分
Ledru-Rollin駅(メトロ8号線) 徒歩約8分
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