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プロローグ
福岡市内から車で1時間ほど。
青い海と山の緑が交差する道を抜けると、唐津の町が姿を現します。
この日は、老舗の和食と新進気鋭の中華、二つの食体験を中心にした日帰りの小さな旅。
食を通して土地の風景や人に触れることで、唐津という場所の奥行きを確かめてみたいと思いました。
気軽に訪れられる距離感ですので、旅の参考にしていただければ嬉しいです。
福岡から唐津へ、車での道中
福岡市内を出発し、唐津へ向かう道のり。
市街地を抜けるとすぐに、濃い緑の山々と広い空が視界いっぱいに広がっていく。ハンドルを握る手に差し込む陽射しも、どこか柔らかく感じられる。
やがて海が見えてくると、景色は一気に開ける。透き通るような青のグラデーションが、山の緑と溶け合いながら遠くまで続いていく。窓を少し開けると潮の香りが漂い、唐津が近づいていることを感じさせてくれる。
高台の道からは、眼下に入り江と町並みを望むことができ、ドライブそのものが旅の楽しみになっていた。
ただ目的地へ向かうだけではなく、この移ろう景色の中に身を置く時間こそが、唐津への旅の始まりだった。
昼食は玉島川のほとりに佇む「飴源」
唐津の町を抜け、玉島川沿いに車を走らせると、川のせせらぎと山の緑に抱かれるようにして「飴源」が姿を現しました。
瓦屋根に格子窓を備えた木造の建物は、天保期から続く歴史をそのまま刻んでいるようで、川辺の風景にしっとりと溶け込んでいます。
橋の上から川面を眺めると、流れる水音や鳥の声が聞こえ、土地の豊かさを感じさせてくれます。そんな原風景のような景色を楽しみながら、店の暖簾をくぐりました。
昼食は落ち着いた座敷でいただきました。
飴源は川魚や山菜を中心とした料理で知られる老舗で、この日も唐津の自然をそのまま映したような一皿が並びました。滋味深い味わいに、時の流れが緩やかになるような心地よさを感じました。
料理の詳細については、別の記事で改めて紹介したいと思います。
- ADDRESS
佐賀県唐津市浜玉町五反田1058-2
アクセス
JR筑肥線 浜崎駅からタクシーで約5~7分程度
徒歩だと約40〜45分
車では西九州道 浜玉ICから約5分、駐車場もあります(無料・20〜30台)
- OPEN
通常:11:00~21:00
定休日
毎週火曜日(祝祭日は営業の場合あり)
- CONTACT
0955-56-6926
- AWARD
ミシュラン
2014年:二つ星
2019年:一つ星
ゴ・エ・ミヨ
2023〜2025年:連続掲載(15.5点/3トック)
食べログ
2020〜2025年:Bronze受賞
2025年:日本料理 WEST 百名店 選出
- COMMENT
- 江戸時代創業の川魚・摘草料理、唐津焼の器、個室、老舗らしいもてなし
浜玉町の銘菓「伊藤けえらん」
昼食を終えたあと、飴源の女将さんに紹介していただき、浜玉町の「伊藤けえらん」に立ち寄りました。
江戸時代から四百年以上続く老舗で、今も昔ながらの町家造りの店構えが残っています。
看板商品の「けえらん」は、米粉を使った薄皮にあんを包み、蒸した素朴な菓子です。小ぶりながらもふわりとした食感で、口の中にやさしい甘さが広がります。地元では祝い事や日常のおやつとして親しまれてきたもので、土地の記憶をそのまま味わうような存在でした。
店内には和菓子を買い求めるお客さんがひっきりなしに訪れ、賑わいの中にも温かな雰囲気があります。唐津を訪れた際に立ち寄る価値のある一軒だと感じました。
虹の松原でひと休み
唐津の代表的な景勝地「虹の松原」にも立ち寄りました。道の両側に広がる松林は延々と続き、車窓からの眺めだけでも圧倒されます。陽射しが木々に遮られて心地よい陰をつくり、風にそよぐ松の音が耳に残りました。
松原の中ほどにある名物のバスカフェ「からつバーガー」にも足を止めました。注文したのはエッグバーガー。熱々のパティに半熟卵とソースが絡み、レタスの食感と一緒に頬張るとシンプルながら満足感があります。淹れたてのアイスコーヒーと一緒に味わい、松林の木陰で一息つきました。
夜は中華でのディナーを控えていたので、この日は控えめに。観光名所でありながら地元の人の日常にも溶け込む虹の松原は、旅の合間に立ち寄るのにちょうどいい場所でした。
唐津城へ
午後は唐津城を訪れました。
この日は気温が40度近くまで上がり、石段を上るだけでも体力を奪われるような猛暑。そこで利用したのが、斜めに上がる「唐津城エレベーター」です。乗り込むと、ゆっくりと斜面を滑るように上昇していく感覚が新鮮で、ちょっとしたアトラクションのようでもありました。
城郭の上に出ると、眼下には唐津湾が広がり、青い空と海が眩しいほどに輝いていました。炎天下の厳しさを一瞬忘れるほど、爽快な眺めです。
唐津の町並みと松原を一望でき、改めてこの土地の豊かさを実感しました。
ディナー前に「シーサイド唐津」のスパでひと息
夕方は「ホテル&リゾーツ 唐津(シーサイド唐津)」の西館にある展望浴場に立ち寄りました。
目の前に唐津湾の大海原が広がり、湯に浸かりながら水平線を眺めていると、潮風に包まれて心も身体もゆったりとほぐれていきます。猛暑で火照った体に、海を望む露天風呂はまさに極上の時間でした。
立ち寄り湯では、サービスで冷たいお水とアイスをいただけるのも嬉しいところ。汗を流したあとのささやかなご褒美が、より一層リフレッシュ感を高めてくれます。
すっきりと整ったところで、夜のディナー「中華大しげ」へと向かいました。
夜は「中華 大しげ」で
夕暮れどきに辿り着いたのは、町家を改装した趣ある一軒「中華 大しげ」でした。
黒塀の小径を抜けると、庭の緑と静かな空気が広がり、非日常へと誘われるような感覚になります。
カウンターに腰を下ろすと、唐津の食材を巧みに取り入れた中華のコースが始まりました。
ひと皿ごとにシェフの工夫と土地の魅力が重なり、旅の締めくくりにふさわしい時間を過ごすことができました。
料理の詳細については、また別の記事で紹介したいと思います。
エピローグ
昼は玉島川のほとりで味わった老舗の和食。
女将さんに導かれて出会った土地の銘菓。
松林のドライブに城下町の景観、そして海を望むスパでのひととき。
最後に「中華 大しげ」で締めくくった食の時間。
福岡市内から車で1時間以内で行ける唐津ですが、この一日の流れのように食と風景の両方をしっかり楽しむことができます。
短い滞在ながらも、唐津という町の豊かさを改めて感じる旅となりました。旅の計画を立てる際の参考になれば幸いです。
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