BISHOKU QUEST

Ultramarinos Marín (ウルトラマリノス・マリン) について

コンセプト

バルセロナのグルメシーンで注目を集める「Ultramarinos Marín」.

シェフのボルハ・ガルシアが手がける、素材の魅力を最大限に引き出す料理が特徴のレストランです。

1970年代のバルを思わせる外観と、現代的な感性が融合した空間です。店内は、活気あふれるバルエリアと、落ち着いた雰囲気のアサドールエリアに分かれています。バルエリアでは、12席のカウンターが設けられ、目の前で調理される様子を楽しめます。アサドールエリアでは、オークやオリーブの薪を使った炭火焼き料理が提供され、素材の旨味を存分に味わえます。

料理は、シンプルながらも素材の質と調理技術が際立つ一皿ばかり。自家製のシャルキュトリーやテリーヌ、季節の魚介類の炭火焼き、発酵技術を駆使したソースなど、どれもが丁寧に仕上げられています。また、メニューはハーフや1/3サイズでの注文も可能で、少人数でも多彩な料理を楽しめるのが魅力です。

ボルハ・ガルシア シェフ

シェフのボルハ・ガルシアは、バスクの名店「Etxebarri」やデンマークの「Noma」、バルセロナの「Dos Pebrots」などで経験を積んだ実力派です。彼の料理哲学は、素材の持ち味を最大限に活かすこと。過度な装飾や演出を排し、シンプルながらも深い味わいを追求しています。また、発酵や熟成といった伝統的な技法を取り入れ、自家製のガルム(魚醤)やシャルキュトリーなど、独自のアプローチで料理を展開しています。

ミシュランガイド掲載

  • ミシュランガイド掲載「Ultramarinos Marín」は、ミシュランガイドに掲載されており、伝統的なアサドールスタイルのレストランとして紹介されています。

  • The World’s 50 Best Discovery世界的なグルメガイド「The World’s 50 Best Discovery」にも掲載され、地元の常連客やシェフたちに愛されるレストランとして評価されています。

  • TheForkでの高評価予約サイト「TheFork」では、10点満点中9.1点と高評価を獲得しており、料理の質やサービス、雰囲気においても高い評価を受けています。

  • OADガイド掲載「Opinionated About Dining(OAD)」のガイドにも掲載され、シェフのボルハ・ガルシアとそのチームが提供する高品質な料理が評価されています。

ダイニングプレリュード

外観・エントランス

1970年代のバルを彷彿とさせる外観が特徴的なレストランです。ネオンサインやスロットマシンが設置されたエントランスは、レトロな雰囲気を醸し出しつつも、店内に足を踏み入れると、現代的なオープンキッチンと洗練された空間が広がります。このギャップが、訪れる人々に新鮮な驚きを与えています。

 

ダイニングスペース

1970年代の食料雑貨店を思わせるネオンサインとスロットマシンが目印のエントランスを抜けると、店内は大きく2つのエリアに分かれている。

ひとつは、バルエリア
12席ほどのカウンターを中心とした開放的な空間で、目の前でシェフたちが調理する様子を眺めながら、少量ずつ多彩な料理を楽しめる場所。発酵や薪火といった技法を活かした一皿一皿が、小気味よいテンポで運ばれてくる。

もうひとつは、アサドールエリア
店の奥に進んだ先にある、静かで落ち着いたダイニングスペース。オリーブやオークの薪を使った炭火焼き料理が主役で、肉や魚、野菜が香ばしく仕上げられ、しっかりとした食事をゆったりと味わうスタイル。

── そしてこの日は、バルエリアでの食事

カウンターの正面には、その日仕入れた魚介や肉がずらりと並ぶショーケース
光を浴びた新鮮な食材たちが、そのまま料理への期待を引き上げてくれる。
目の前でその食材を手に取り、さばき、火入れしていく様子に、ただ座っているだけで高揚感が広がっていく。

レストランというより、食材と調理のライブステージ。
ここから始まるひと皿ひと皿の記憶に、自然と心が開かれていく。

メニュープレゼンテーション

料理はメニューと、目の前のショーケースを見ながら選んでいく。
カタルーニャ語の料理名に少し戸惑いつつも、並べられた食材を眺めているうちに、不思議と食べたいものが定まってくる。

魚も肉も、その場で取り出し、すぐさま火入れに入るライブ感。
メニューを読むというより、目の前の食材と向き合いながら、ゆっくり順番を決めていくようなスタイルだった。

 

スタータードリンク

食事の始まりに選んだのは、カタルーニャの土着品種**チャレッロ(Xarel·lo)**を100%使ったブリュット・ナチュレ、「Viñas de Caldereta 2021」。

生産者は自然派志向の造り手CASAJOÚ(カサジョウ)
補糖やドサージュを一切行わない“ブリュット・ナチュレ”らしいキレのある仕上がりで、泡は繊細、香りは白い花や洋梨のニュアンス。シャープでミネラル感もあり、スペイン産マルコナアーモンドや魚介系の料理とも好相性。

実際に味わった料理

フライドマルコナアーモンド

グラスが置かれると同時に、さりげなく差し出されたのはフライドマルコナアーモンド。
スペイン産の中でも特に風味豊かとされるマルコナ種を、オリーブオイルで香ばしくローストし、ほんのり塩をきかせたシンプルなおつまみ。

表面はカリッと、口に入れるとしっとりとした油の余韻が広がり、食欲のスイッチを自然と入れてくれる。
この一皿だけで、バルの本気度が伝わる。

アンチョビとバターのパン

スペイン北部・カンタブリア産の上質なアンチョビを、厚めにスライスされたパンにのせ、たっぷりの発酵バターとともに供される一皿。

バターのコクと塩気が、アンチョビの旨みとまっすぐに溶け合い、噛むたびにじわりと味が広がる。焼き目のついたパンの香ばしさが、全体の重心を下から支えているよう。

シンプルで潔く、だからこそ素材の良さが際立つ一品。
泡との相性も抜群で、すでに“この店にして良かった”と思えるタイミングだった。

生ウニ

皿の上に、そのままの姿で供されたウニ(Erizo de mar)。
殻の棘をまとった造形は、どこか原始的で、そのまま“海”を食べるような感覚を呼び覚ます。

スプーンを入れると、中から現れるのは鮮やかなオレンジの身。
舌にのせれば、潮の香りとともに、甘みとほろ苦さが重なり合い、スッと溶けて消える。調味はほとんどなく、素材のまま。

海に近いバルセロナのレストランで、その日届いたものをそのまま出す。
そんな潔い一皿は、シンプルだからこそ記憶に残る。
最初の泡との相性も抜群で、この店の食材に対する敬意を感じた瞬間だった。

手長海老/スカンピ

ショーケース越しにその姿を見た瞬間から、どこか気になっていた一尾。
注文と同時に取り出され、火入れされ、ほんの数分後には目の前に現れたEscamarlans(手長海老)。

パリッと焼き上げられた殻を割ると、ふわっと立ち上がる香ばしさ。
身は繊細で甘く、口の中でスッとほどけていく。その上からかけられたソースは、濃厚さよりも素材を引き立てるような軽やかな乳化ソース。火の入り方が絶妙で、レアとウェルダンのあいだを滑るような仕上がり。

生け簀でも厨房でもない、バルのカウンターでここまでの一皿が出てくる幸福。
この一瞬にすべてが凝縮されていた。

ジャガイモ料理

皮ごと丸ごと火入れされたPatata(揚げジャガイモ)。
高温でパリッと揚げられた皮は、香ばしくカリカリ。中は空気を含んだようにふわっと軽やかで、じゃがいもの甘みがしっかりと感じられる。

横に添えられたのは、アリオリソース。にんにくの風味と乳脂のコクが溶け合ったこのソースを、熱々の芋の断面にのせれば、じゅわっと染み込んでいく。香りが立ち、味に立体感が生まれる瞬間。

ただのジャガイモ、されどジャガイモ。
この料理に出会って、素材の底力を思い知らされた。

スペイン産のハム

友人から「ここの牛の生ハムは必食」と聞いていたので、迷わず注文。
ところが、目の前に現れたのは、しっとりと脂の入った、どう見ても豚の生ハム。おそらくはイベリコ、もしくはセラーノ系のものだろう。

ただ、その失望を補って余りあるのが、この一皿の完成度だった。
口に含めば、軽やかな塩気と芳醇な香りがすっと広がり、脂身にはナッツのような甘みと滑らかさ。切りたてならではの柔らかさと口溶けの良さが際立つ。

求めていた“牛”ではなかったかもしれない。
けれど、スペインという土地で、こうして思いがけず出会えた一皿に、結果として深く満たされていた。

フォアグラのテリーヌ

四角く整えられたそのフォルムに、最初は思わず笑みがこぼれた。
マリンのロゴが並ぶ紙の上に、きっちりと並べられたフォアグラのテリーヌ。

余計な装飾もソースもなし。ただ、温度と脂の艶、そして塩気で勝負している。
ひと口含めば、なめらかで、わずかに温度が上がると同時に口の中でとろけ出す。肝特有の香りは抑えめで、むしろナッティでクリーミーな印象。下ごしらえの丁寧さが伝わってくる。

レストランの個性は、こうした端正な一皿ににじみ出るもの。
フォアグラが苦手な人にこそ勧めたくなる、そんな“静かな主張”がそこにあった。

パルゴ

この日のメインには、ショーケースでひときわ目を引いた**Pargo(パルゴ/鯛の一種)**を。
注文が通ると、奥の鉄板に丸ごと置かれ、スチールボウルで覆いながらじっくりと火入れが始まる。皮目は香ばしく、身にはじんわりと熱が入り、ふっくらと膨らんでいく。

焼き上がった魚は、そのまま一尾まるごと皿にのせられ、熱々のソースがたっぷりとかけられて完成。ソースは焦がしバターのような香ばしさと、魚の旨味を引き立てる酸のニュアンスを併せ持ち、見た目以上に軽やか。

スプーンを入れると、香りとともに湯気が立ち上がり、皮と身が自然にほぐれていく。

スペイン産の“涙豆“

そして、料理の中でもっとも心を動かされたのが、この一皿。
スペイン産の“涙豆(Guisantes lágrima)”。その名の通り、涙のように小さく、光沢のある粒が、白いボウルの中で静かに輝いている。

口に含めば、驚くほど繊細な皮の中から、甘みと青さがほとばしる。
加熱はごく短く、塩とオイルでほとんど何も足さず、豆そのものの“生命力”がまっすぐに伝わってくるような味わい。まさに素材のピークにしか成立しない料理。

肉でも魚でもなく、最も印象に残ったのがこの小さな青い粒だった、という体験に、少し戸惑い、そして深く納得していた。

牛フィレ肉の鉄板焼き

鉄板に置かれた瞬間に立ち上る香り。
それは「この肉は間違いない」と確信させてくれる、ほんの数秒の出来事だった。

Filet de Vedella(牛フィレ肉)。脂をほとんど持たないこの部位を、鉄板の上で一気に火入れ。表面は香ばしく、芯はしっとりとロゼに。
味つけは最小限で、仕上げのオイルだけが肉の旨味をそっと際立たせていた。

見た目は一見シンプル。けれど、火入れとタイミングの妙で、牛肉の持つ“張り”と“緻密さ”を最大限に引き出していた。
豪快さより、繊細さを感じさせる一皿。

Marínの鉄板には、やはり哲学がある。

まとめと感想

バルセロナでいま最も注目を集めるレストラン、Ultramarinos Marín。
話題の一軒を自分の言葉で味わえたことが、何より嬉しい。

涙豆に静かに感動し、揚げた芋とアリオリ風バターに唸り、鉄板で焼かれる魚や肉の火入れに見惚れる。
どれも華やかではないのに、忘れがたい。

行けてよかったと思える店。
次は奥のアサドールで、ホルヘ・フエンテス・シェフの料理をじっくり堪能したい。

予約とアクセス情報

営業時間
月 休業
火〜金 9:00–11:45、13:00–15:30
木〜土 19:30–22:00(ディナー営業)
土曜日 上記に加え、9:00–11:45(朝食営業)
日曜日 休業

予約は以下の方法で受け付けています:

電話、WhatsApp、公式ウェブサイト:ultramarinosmarin.com

特にアサドールエリアは席数が限られているため、早めの予約をおすすめします。

住所:Carrer de Balmes, 187, 08006 Barcelona, Spain
最寄り駅:FGC(カタルーニャ公営鉄道)「Gràcia」駅から徒歩約5分
エリア:サリア=サン・ジェルバジ地区(Sarrià-Sant Gervasi)

バルセロナ中心部からもアクセスしやすく、観光やショッピングの合間に立ち寄るのにも便利な立地です。

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「知られざる美食の旅へ—心と五感で味わう特別なひとときを」

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