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physis(ピュシス)について
コンセプト
physis(ピュシス)は、ギリシャ語で「ありのままの自然の本性」を意味します。この言葉は、単なる「自然」ではなく、人間の手を加えずとも存在する、本質的で普遍的な自然の在り方を表しています。
physisでは、この理念を料理や空間づくりに反映させています。地元・国東の食材をありのままに活かし、その土地ならではの風土を感じられる料理を提供。また、築100年以上の古民家を改装したレストランの空間は、過度な装飾を施さず、自然な美しさを尊重するデザインが特徴です。
ここでは、食材の持つ本来の味わいや、日本の四季が織りなす景色を五感で楽しむことができる特別なダイニング体験が提供されます。physisの料理を味わうことは、まさに「自然の本性」を感じるひとときと言えるでしょう。
川崎遼平シェフ
川崎遼平シェフは広島県出身の料理人。東京のビストロで修行を積んだ後、フランスのアルザス地方へ渡り、更なる経験を積みました。その後、パリの一つ星レストラン「QUI PLUME LA LUNE」で研鑽を重ね、高度なフレンチの技術を習得。
帰国後は自身のレストラン開業を目指し、地元広島を含む全国各地を訪れた結果、大分県国東市の豊かな自然や独特の風土に魅了され、移住を決意。現在、国東市にてオーベルジュ「physis(ピュシス)」を運営しています。
レストランの評価
築100年の古民家をリノベーションした趣のある空間で、川崎シェフの繊細な料理を味わうことができるのも魅力のひとつ。料理は季節ごとにメニューが変わり、その時々の旬の味覚を楽しめます。
まだオープンして間もないながらも、全国から訪れる食通たちの間で話題となっており、今後さらに評価が高まることが期待されるレストランです。国東の地で、どのように進化していくのか、これからの展開が楽しみな一軒です。
ダイニングプレリュード
外観・エントランス
physis(ピュシス)の外観は、伝統的な日本家屋を活かした趣のあるデザインです。築100年を超える古民家をリノベーションしており、落ち着いた雰囲気の中で食事を楽しめるのが特徴です。
庭には石畳の小道が続き、植栽が施されており、訪れる人々を穏やかに迎え入れる空間が演出されています。
山々を背景にした落ち着いたロケーションが、都会の喧騒を忘れさせる静寂と安らぎを提供しています。
ダイニングスペース
physis(ピュシス)のダイニングスペースは、伝統的な日本家屋の趣を活かしながら、モダンで洗練された空間に仕上げられています。
大きな窓からは、四季折々の自然が望め、まるで絵画のような風景が広がります。目の前には田園風景や山々が広がり、時間の流れがゆったりと感じられる特別な空間です。
床や柱には無垢の木材が使用されており、自然の温かみを感じることができます。また、テーブルや椅子はシンプルでありながら洗練されたデザインで、料理と調和する空間を演出しています。
テーブルには、シンプルながらも洗練されたセッティングが施されており、黒い鉄製のプレートとナチュラルなリネンが特徴的。フレンチの洗練された美しさと和の落ち着きを融合させたスタイルが感じられます。
囲炉裏が配置されていることも特徴の一つで、伝統的な日本家屋の要素を残しながら、現代のミニマルな美意識が加えられています。壁には自然素材を活かした塗装が施され、落ち着いた雰囲気が漂います。
オープンキッチンでは、川崎シェフが一皿一皿にこだわりながら料理を仕上げる姿を間近で見ることができます。カウンターには、土壁のような質感の素材が使われ、自然と調和したデザインになっています。
physisでは、一日一組限定で最大6名までのゲストを迎えるスタイルを採用しています。この特別な空間で、贅沢なプライベートダイニングを楽しむことができます。喧騒から離れた静かな環境で、ゆっくりと食事と会話を楽しめるのが大きな魅力です。
メニュープレゼンテーション
メニューはシンプルで美しく折りたたまれた紙に包まれ、開くと品のある書体でメニュー内容が記されています。絶妙な余白のバランスが、洗練された印象を与えます。
メニューには、料理名だけでなく、主な食材が対比的に並べられており、それぞれの組み合わせの妙を感じさせます。
「赤貝 × 菜花」「鹿 × ごぼう」など、季節の食材がどのように調理されるのか、ゲストの期待を高める工夫が施されています。
メニューを開く瞬間は、食事の始まりを象徴する特別なひととき。手に取ったときの期待感、紙を開く動作の丁寧さが、これから始まるコース料理への没入感を高めてくれます。
スタータードリンク
食事のスタートを飾るのは、来浦(くのうら)という地域で採れた梅を使った自家製シロップのソーダ。梅の自然な甘みと爽やかな酸味が心地よく、シュワっと弾ける炭酸が口の中をさっぱりとリフレッシュさせてくれます。
実際に味わった料理
紋甲烏賊/蕪
一皿目は、紋甲烏賊と蕪の小さなタルト。サクッと軽やかなタルト生地の中に、しっとりとした紋甲烏賊が包み込まれ、その上には薄くスライスされた蕪が美しく重ねられています。
仕上げには、柑橘の皮を繊細に削りかけることで、爽やかな香りとほのかな酸味がアクセントに。イカの旨みと蕪の甘み、そして柑橘のフレッシュな香りが調和し、一口ごとに繊細な味の広がりを楽しめる一品です。
南瓜/ハナミョウガ
南瓜のスープは、口当たりがなめらかで、濃厚ながらも優しい甘みが広がる一品。
仕上げには、山に自生するハナミョウガの種を使い、繊細な香りをまとわせた泡を添えています。
軽やかな泡がスープの表面を覆い、口に含むたびにふわりと広がる芳香が南瓜の甘さと絶妙に調和。
素材の力強さと、ナチュラルな香りの余韻が楽しめる、シンプルながらも奥深い味わいの一皿です。
猪/蕎麦
そば粉を使ったガレットの中に、旨みの詰まった猪肉と銀杏を包み込んだ一皿。猪の力強い風味と、ほくほくとした銀杏の優しい味わいが絶妙に絡み合う。
さらに、山椒とマスタードを焦がし、パウダー状にしたものを周囲に散らすことで、ほのかなスパイスの香りが広がり、味わいに奥行きを加えている。
噛みしめるほどに異なる食感と香りが交差し、素材の持つ個性を存分に楽しめる仕上がりとなっている。
赤貝/菜花
赤貝とキャベツ、菜の花、スナップエンドウを合わせた爽やかなサラダ。
赤貝の濃厚な旨味とコリコリとした独特の食感がアクセントになり、シャキシャキとした野菜の歯ごたえと心地よいコントラストを生み出す。
菜の花のほろ苦さ、スナップエンドウの甘み、キャベツのやさしい食感が赤貝と調和し、一口ごとに異なる風味の重なりを楽しめる一品。
足赤海老/カリフラワー
足赤海老の繊細な甘みとカリフラワーの優しい風味が調和した一皿。
ベースにはカリフラワーのソース、その上にはスライスしてソテーしたカリフラワーを添えることで、異なる食感のコントラストを演出。
ネズミサシの実を使って香りをまとわせ、ほのかにスパイシーなニュアンスをプラス。足赤海老とカリフラワーのねっとりとした食感が口の中でゆっくりと広がり、余韻のある味わいを楽しめる。
国産小麦と天然酵母で作る豊後高田市のパン工房「HIBINO」さんのパン
たけのこメバル/春菊
たけのこメバルのふっくらとした身に、旨味を引き立てる魚の出汁と生海苔、春菊を使ったソースを合わせた一皿。
海苔の磯の香りと春菊のほろ苦さが、メバルの繊細な味わいを包み込み、奥深い風味を生み出す。
仕上げにカツオ菜とプラントを添えることで、食感に変化を持たせながら、全体のバランスを引き締める。素材同士の調和が際立つ、滋味深い一品。
大分特産のかぼすを使った自家製シロップに、炭酸を加えたかぼすソーダ。かぼすの爽やかな酸味とほのかな甘みが絶妙に調和し、シュワっとした泡が口の中をさっぱりとリフレッシュさせてくれる。
食事との相性も良く、素材の味を邪魔せずに引き立てる、心地よい清涼感のあるドリンク。
鹿/ごぼう
鹿のロースに鹿のコンソメ、天然のヒラタケ、ごぼうを合わせた一皿。
はしっとりと柔らかい鹿肉は程よい野生味がありながらも洗練された味わい。そこに、天然のヒラタケの豊かな香りと、ごぼうの土っぽい力強い風味が加わることで、鹿のコンソメを注ぐことで鹿肉の持つ滋味深さをより引き立てている。
キジバト/蕗の薹
メインディッシュは、力強い旨味を持つキジバトを主役にした一皿。
印象的なのは、木の枝に刺された砂肝の演出。まるで森の中の情景を切り取ったかのような独創的なプレゼンテーションが、食事の流れに驚きと遊び心を加えている。
ソースはキジバトの出汁と蕗の薹を組み合わせ、深みのある旨味とほのかな苦味が共存する仕上がりに。添えられた菊芋と蕗の薹のソテーが、春の訪れを感じさせる香りとともに、料理全体にバランスをもたらしている。
森の恵みを感じる、五感に響く一品。
デザート & フィナーレ
苺/ヴェルヴェーヌ
デザートは、甘く香り高い大分県産の「ベリーツ」苺を主役にした一皿。
フレッシュな苺の瑞々しさに、フロマージュブランの軽やかな酸味が寄り添い、爽やかで上品な味わいを演出。
さらに、ホワイトチョコレートのキャラメリゼが加わり、優しい甘さとほのかな香ばしさがアクセントに。
仕上げに添えられたのは、ヴェルヴェーヌの香りを纏わせたアイスクリーム。
ハーブの爽やかな香りが全体をまとめ、口の中に広がる余韻が心地よい、洗練されたデザート。
焼菓子
最後を締めくくる焼菓子は、フランスの伝統菓子・カヌレ。
外は香ばしくカリッと焼き上げられ、中はしっとりもっちりとした食感が特徴的。ラムの芳醇な香りとバニラの優しい甘みが広がり、余韻のある味わいを楽しめる。
川崎シェフがフランスでの修行を経たからこそ生まれる、本場の技術を活かした一品。physisの食事の締めくくりとして、洗練された甘さと香ばしさが心に残る。
窓の外には、風に揺れる梅の木。その枝にはヒヨドリが集まり、葉物野菜や梅の実をついばむ姿が見える。農作物を荒らすこともあり、やっかいな存在ではあるが、まるまると太ったその姿を見ていると「食べたら美味しそう」と思わず冗談もこぼれる。
食事の後、宿泊部屋を案内してもらうと、そこには自然と一体化した静寂な空間が広がっていた。
宿泊部屋は、落ち着いたアースカラーの壁と木の温もりが感じられるシンプルなデザイン。窓の外には庭が広がり、刻々と変わる自然の景色を眺めながら、時間を忘れてゆっくりとくつろげる。
特徴的なのは、なめらかで柔らかな質感の土で作られたバスタブ。無機質な浴槽とは異なり、土の持つ自然な温かみが身体を優しく包み込む。大きな窓からは外の景色が広がり、自然の光が差し込むことで、よりリラックスできる空間になっている。
食事を楽しんだ後、夜は静寂の中で休み、朝は自然の光とともに目覚める。都会の喧騒を忘れ、自然とともに過ごす時間は、まさにphysis(ありのままの自然の本性)を感じる体験そのもの。
そんなことを想像できるような空間でした。
まとめと感想
physis(ピュシス)は、「ありのままの自然の本性」というコンセプトを体現した、食と宿泊を通じて自然と一体化できる特別な空間だった。
フランスで研鑽を積んだ川崎シェフが生み出す料理は、国東の自然がもたらす食材を活かし、洗練された技法で表現されたものばかり。
一皿一皿に込められた繊細な工夫や香りの重なりが、食材の持つ力強さと優しさを引き出していた。
特にジビエを用いた料理には、地域の恵みとシェフの哲学が色濃く反映されており、将来的には自ら狩猟したものを使いたいという想いにも、この土地との深い結びつきを感じた。
築100年以上の古民家を改装したレストランとオーベルジュは、過度な装飾を施さず、元々の建物の魅力を活かしたシンプルな美しさが際立っていた。
土の風呂や、外の景色を切り取るような窓の配置など、どこにいても「自然の中で過ごしている」という感覚が心地よかった。
physisでの滞在は、ただ美味しい食事を楽しむだけでなく、五感を研ぎ澄ませながら自然と向き合う時間だった。
料理、空間、景色、それぞれが繊細に響き合い、日常では味わえない静けさや豊かさを感じることができた。
ここで過ごす時間は、決して派手ではないが、じわりと心に染み込んでくる。
また訪れたくなる、そして次に来たときにはどのように進化しているのか楽しみになる、そんな場所だった。
予約とアクセス情報
予約方法
physisでは、以下の方法で予約を受け付けています。
電話予約かInstagramのダイレクトメッセージ(DM)
※予約は完全予約制となっておりますので、事前にお問い合わせください。
アクセス情報
住所:大分県国東市国東町来浦470
詳細なアクセス方法については、予約時に直接お問い合わせいただくか、公式Instagramアカウントをご確認ください。