BISHOKU QUEST

almarge (アル・マルジェ) について

コンセプト

バルセロナ近郊のバダロナに位置するレストラン「Al Marge(アル・マルジェ)」は、地元の食材を活かしたファーム・トゥ・テーブルの料理を提供する、ミシュランガイドにも掲載された注目の一軒です。このレストランは、プロフェッショナルなカップルによって運営され、伝統的な地中海料理に現代的なアレンジを加えた料理を提供しています。レストラン名の「Al Marge」には、「川のほとり」や「余白」、「独立したやり方」といった意味が込められており、彼らの哲学を表しています。カジュアルで温かみのある雰囲気の中、シェアに適した料理が楽しめるのが特徴です。料理は、地中海の伝統を尊重しつつ、現代的な感覚を取り入れたもので、ワインのセレクションも豊富なので料理との相性を楽しむことができます。

ヘルマン・フランコ シェフとマルタ・ロンブーツ夫妻

「Al Marge(アル・マルジェ)」のシェフ、ヘルマン・フランコ(Germán Franco)氏は、ヘルマン氏は、ミシュラン一つ星を獲得したAlkimiaやAlkostatでスーシェフや料理長を務めた経験を持ち、マルタ氏はソムリエとしてナチュラルワインに精通しています。ヘルマン・フランコ氏は「Alkostat」の立ち上げにも関わっており、彼の経験が「Al Marge」の料理にも反映されています。

ソムリエであり、almargeの共同経営者でもあるのは
マルタ・ロンブーツ(Marta Rombouts)氏です。

彼女は、ヘルマン・フランコ氏とともにレストランを運営し、ナチュラルワインに精通したプロフェッショナルとして、料理とのペアリングやセレクションを担当しています。

ミシュランガイド掲載

「Al Marge」は、2025年版のミシュランガイド・スペインに掲載されており、カジュアルでありながら高品質な料理を提供するレストランとして評価されています。

ダイニングプレリュード

外観・エントランス

バダロナの住宅街にひっそりと佇む「Al Marge」。
周囲の建物に溶け込む控えめな佇まいながら、黒を基調にしたモダンなファサードと、店名をあしらったシンプルなサインが静かに存在感を放っています。

エントランスの扉を開けると、そこには木と石を基調とした温かみのあるインテリアが広がり、落ち着いた空気の中に、料理への期待が静かに高まる構成。
外からは想像できないほど洗練された空間が奥へと続き、あくまでも日常に寄り添いながらも、非日常を感じさせてくれる静かな導入です。

ダイニングスペース

店内は2フロア構成。
お昼は大きな窓から自然光がたっぷり差し込む明るい空間で、心地よい開放感とともに、リラックスした時間を演出してくれます。

インテリアは、くすみピンクのベルベットチェアと淡いトーンの丸テーブルが配され、柔らかで洗練された雰囲気。細部にまで気を配った美しい設えが、料理の世界観を静かに引き立てます。

壁面には、アーティストBtoyによるエミーリエ・フレーゲの肖像画が飾られており、空間にさりげない芸術性と個性を添えています。
この肖像が語るように、Almargeはクラシックと現代性の狭間を行き来するレストラン。料理だけでなく、空間においてもその哲学が貫かれています。

メニュープレゼンテーション

テーブルの中央に配されたメニューは、シンプルかつ上品な卓上スタンド型。
ベージュ地にシックなサンセリフ体で印字されたリストは、カタルーニャ語で記されており、地元への敬意と地域密着型の姿勢がうかがえます。

金色の縁取りがほどこされたスタンドは控えめながらも洗練されており、料理のプレゼンテーション同様、過剰な演出を避けた静かな美学が光ります。

また、メニューの右上にはQRコードも添えられており、訪れるゲストがスマートフォンで詳細や言語切り替えにアクセスできるよう配慮されているのも印象的です。

木製の温かみあるテーブルの上に自然と馴染むこのプレゼンテーションからも、「Almarge」の哲学――気取らずに、しかし丁寧に――が感じられます。

スタータードリンク

二軒目として軽やかに訪れたこの夜、
グラスに最初に注がれたのは、Mas Candí Brut Nature。
カタルーニャのスパークリングワインとして注目される「CORPINNAT(コルピナット)」の1本で、
自然酵母による発酵と長期熟成によって生まれる、シャープで清々しい酸と繊細な泡立ちが特徴です。

実際に味わった料理

パン・コン・トマテ:Pa artesanal Carles Bertran amb tomaquet

最初の一品として供されたのは、
Carles Bertran(カルレス・ベルトラン)による手作りのクラフトパンに、
完熟トマトをすりおろして乗せた、カタルーニャ定番の「パン・コン・トマテ」。

軽くトーストされたパンの香ばしさと、
トマトのジューシーな酸味、
そしてオリーブオイルのコクが絶妙なバランスで一体に。

一見シンプルながら、
素材の質と組み合わせの妙が際立つ、最初のグラスを引き立てるにふさわしい一品です。
これだけで、店の信頼感が伝わってくる。そんな導入でした。

ローマ風イカのフリット サフランマヨネーズ添え

黄金色にカリッと揚げられたイカのリングに、
まろやかなサフランマヨネーズがふんだんにあしらわれ、
ほんのり甘みのある玉ねぎのマリネやフレッシュハーブが彩りと香りのアクセントに。

衣は軽やかで油っぽさがなく、
イカ本来の柔らかさと旨味を引き立てる絶妙な火入れ。
ひと口目から、そのクオリティの高さに驚かされる一皿でした。

シュタイヤーマルク地方の生産者、アンドレアス・チェッペ(Andreas Tscheppe)によるゲルバー・ムスカテラー(黄マスカット)。
ラベルには象徴的な蝶が描かれ、自然と共生する彼の哲学が表れています。

このワインは、ビオディナミ農法で育てられたブドウを使用し、醸造中も添加物は極力排除。
グラスに注ぐと広がる、白い花やハーブ、柑橘の皮、スパイスを思わせる複雑なアロマ。
口に含むと、しっかりとした骨格と清涼感のあるミネラルがあり、余韻は長く、料理との相性も幅広い1本です。

現在では生産量の少なさと人気の高まりから、流通量が限られ入手困難になりつつある希少なナチュラルワイン。
この夜、「Almarge」で出会えたこと自体が小さな奇跡のようで、
サフランマヨネーズを添えたイカのフリットとの相性も申し分ないものでした。

焼きパプリカとブッラータ

長時間かけてじっくりと火入れされたパプリカは、甘みと旨味が凝縮されたひと皿。
スモーキーさと自然な甘さが同居する柔らかな果肉に、
とろけるようなブッラータが重なり、
口に運ぶごとに温度と質感のコントラストが広がります。

ケッパーや香草のアクセントが加わることで、
ただの“野菜とチーズ”に留まらない、手間を惜しまぬ一皿として記憶に残る仕上がり。
ワインとの相性も申し分なく、素材の引き算から生まれる豊かさを改めて感じさせてくれました。

スモークした菊芋とバカラオのブランダーダを詰めたアーティチョーク

アーティチョークに、
ブランダーダ(塩鱈とオリーブオイルのペースト)を詰めた温菜。
さらにスモークされたキクイモ(nyàmera fumada)と青菜、削ったチーズ、ハーブが重なり、
香り・食感・温度のバランスが非常に繊細に計算された構成。

口に入れた瞬間に広がるスモーキーさと塩鱈の旨みに、
アーティチョークのほろ苦さとクリーミーなソースが寄り添い、
滋味深くも印象的なひと皿に仕上がっていました。

オーガニック牛のタルタル 燻製イワシとスパイスバター

粗く刻まれたオーガニック牛の赤身肉に、
燻製サーディン(イワシ)の旨味とスモーキーな香りを重ねた一皿。
仕上げにはスパイスを効かせたバターが添えられ、
タルタルでありながら、どこか温かみのある複雑な余韻を残す構成に。

ケッパーや塩、ハーブの葉が繊細に散らされ、
そのまま一口、あるいはクラッカーにのせて食感とともに楽しむスタイル。
肉のミネラル感と魚介の発酵香、バターの丸みが、
一体となって静かに深まっていく印象的な一品でした。

ナチュラルワインと合わせて、
素材の個性と緻密な組み立てを堪能するのにふさわしい時間を演出してくれます。

Almarge風アロス・ア・バンダ 小舟で獲れた魚とともに

大鍋で供される、Almarge流アロス・ア・バンダ。
焦げる寸前まで煮詰めたような濃密な魚介のブイヨンを、
一粒一粒にしっかりと吸わせた、力強く、芯のある米料理。

表面はパリッと、中央はしっとり。
中央に置かれた黄色いアイオリソースが溶け込むことで、
香ばしさにまろみとコクが加わり、味わいが変化していきます。

具材はシンプルに、地元で揚がった魚を数切れずつ配置。
彩りではなく、出汁にすべてを託したような構成に、
この一皿の本気度が伝わってきました。

デザート&フィナーレ

炭火焼き洋梨、バニラフランとヨーグルト

締めくくりに登場したのは、炭火でじっくり火入れした洋梨を主役に据えた一皿。
皮ごと焼き上げたことで、果肉の甘さが際立ち、香ばしさと果汁のコントラストが印象的。

添えられたのは、やさしい甘さのバニラフランと軽やかなヨーグルトクリーム。
洋梨の酸味と香りをしっかりと受け止めながらも、どこか軽やかで、余韻まで心地よい構成に。

まとめと感想

バルセロナの喧騒から少し離れたバダロナの地に、静かに根を張るレストラン〈Almarge〉。
その空間には、気取らず、けれど明確な美意識が通っていました。

どの皿も派手な演出ではなく、素材の声に耳を澄ませ、
時間と手間を惜しまず丁寧に組み上げられているのが伝わってくる。
特に印象的だったのは、香りと温度の扱いのうまさ。
火入れされた野菜やスパイスバター、燻製魚の香り、そして炊き込みご飯の底に染みる力強さ。
そのすべてが、食べる者の感覚に静かに訴えかけてくるような料理ばかりでした。

ワインのセレクトにも一切の隙がなく、
ナチュラルワインの個性を活かしながら、料理と響き合う流れで構成されていたのも印象的。

あえてコースではなくアラカルトで一皿ずつ選びながら、
ペースを崩さず、余韻まで保ってくれる店はそう多くありません。
〈Almarge〉はその数少ない一軒として、
食べることの「静かな喜び」を思い出させてくれる場所でした。

予約とアクセス情報

営業日:
金曜〜月曜
ランチ 13:00〜15:00/ディナー 20:00〜22:00
※火曜〜木曜は休み

予約は電話(+34 938 24 71 90)または公式サイトより
almargerestaurant.com
Instagram:@almarge.restaurant

Carrer de Lleó, 79, Badalona, Barcelona
最寄り駅:バダロナ駅から徒歩約10分

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「知られざる美食の旅へ—心と五感で味わう特別なひとときを」

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