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中華 大しげ について
コンセプト
佐賀・唐津の町並みにひっそりと佇む「中華 大しげ」。
店を構えるのは、重要文化財に指定された母屋の裏手に残された元炭小屋。改装された空間は、カウンター4席と小さなテーブル席がひとつという、親密で静かな設えです。完全予約制で2名からの受付、ディナーは一日一回転のみ。特別な一夜にふさわしい空気が流れています。
供されるのは、約13,000円のコース一択。京都の名店で研鑽を積んだ料理人夫妻が手がけるのは、唐津の海や山の恵みを軸にした中華。けれども、食べ進めるごとに和の余韻が残り、重たさのない余白のある味わいに仕上がっています。中華と和食、その二つの技が唐津の食材の生命力を引き出す——。訪れた人が口を揃えて「軽やかなのに奥行きがある」と評する理由が、そこにあります。
シェフ夫婦について
「大しげ」を率いるのは、京都の予約困難店「にしぶち飯店」で二番手を務めた大重さん。
重厚な中国料理に、発酵や香辛料の香りを織り込み、現代的に昇華させる同店での経験は、唐津の地でも生きています。
料理を支えるのは、奥様。日本料理の名店、京天神「野口」で研鑽を積んだ料理人です。盛りつけや出汁の扱いに見える繊細さは、まさに和の技が息づく証。夫婦それぞれが異なる分野の一流に触れた後に立ち上げた一軒だからこそ、料理には自然な調和と独自の輪郭が生まれているのでしょう。
京都で培った中華と和食の感性を、唐津の食材に重ねる。
その先に広がるのは「ここでしか出会えない味わい」でした。
レストランの評価
唐津の中華料理界に新風を吹き込んだ「中華 大しげ」は、開業から間もなく食べログの「アワードランク」並びの高評価を得ており、受賞も視野に入る期待感が漂っています。和の繊細さと中華の力強さを高次元で融合させた料理は、「芸術性すら感じさせる上品な中華」と形容されるほど、味と構成力に強いこだわりが宿っています。
ダイニングプレリュード
外観・エントランス
町家をそのまま活かした外観。黒塀に囲まれた細い路地を進むと、足元には石畳が敷かれ、両脇には控えめな植栽が添えられている。格子窓の奥からは柔らかな灯りがこぼれ、白い暖簾が風に揺れる。その横に掲げられた木製の看板には「中華 大しげ」と刻まれ、足元の行灯が静かに灯されている。華美に飾るのではなく、町家本来の趣をそのまま残したしつらえで、街の喧騒からほんの数歩離れるだけで空気が変わるのを感じる。外からは料理の気配を感じさせない閉ざされた雰囲気だが、その静けさこそが特別な時間への入口であることを伝えている。
この建物は「旧藤田家住宅」と呼ばれる質屋兼住宅で、大正14年(1925年)に建てられたもの。街道に面した黒塗りの格子と土壁のコントラストが印象的で、商いと生活が一体となった当時の姿を今に伝えている。入口に設置された案内板には、質屋としての役割や、防火・防犯を考えた構造についての説明が記されており、建物をただ眺めるだけでは気づけない背景を補ってくれる。足を止めて読み込むことで、町並みの一角に刻まれた歴史の厚みがより立体的に感じられた。
ダイニングスペース
店内は町家の趣を活かした落ち着いた空間。カウンターは木目の美しい一枚板を使い、細部まで丁寧に仕上げられている。椅子には籠が用意され、荷物を置くことができる配慮も感じられる。
テーブル席は柔らかな照明が灯り、壁の色合いと調和した木のテーブルが中心に据えられている。静かで落ち着いた空間は、食事に集中できる居心地の良さがある。
シンプルながらも心地よい空間は、料理の繊細さと呼応し、訪れる人に自然と特別な気分をもたらす。
メニュープレゼンテーション
唐津「中華 大しげ」では、完全予約制でおまかせコース(税込13,000円/2名〜)のみを提供しています。
唐津を中心とした地元産の食材にこだわり、季節感を大切にした料理が並びます。
全体を通して油分を抑えた仕立てで、品数が多くても最後まで軽やかに食べ進められる構成です。
実際に味わった料理
唐津の真牡蠣
唐津産の真牡蠣は、香醋をジュレ状にして胡瓜と椒麻(ジャオマー)を合わせたソースとともに提供される。
香醋のまろやかな酸味と胡瓜の爽やかさ、そして椒麻のピリッとした刺激が牡蠣の旨みを引き立てる。
付け合わせには、同じく唐津産のアスパラガスとフルーツトマトが添えられ、地元食材の新鮮さと味のバランスを感じさせる一皿。
唐津産の鱧落とし
唐津産の鱧は、ふわりとした食感が特徴。よだれ鶏のタレに軽くくぐらせていただく。
タレは醤油ベースに花椒や香味野菜が効いており、鱧の淡白な旨みとよく合う。
口の中でほろりとほどける鱧の優しい味わいと、ピリッとしたアクセントが絶妙なバランスを生んでいる。
シャンピン烏龍茶
注文したのは、ティーポットで提供されるシャンピン烏龍茶。
深みのある香りとまろやかな味わいが特徴で、料理の合間に口をすっきりとさせてくれる。
温かい湯気とともに供されるその茶は、落ち着いた時間を演出し、食事の余韻を静かに引き立てていた。
スペシャリテの焼豚(チャーシュー)
「中華 大しげ」のスペシャリテのひとつが、マダムが目の前で切り分けてくれる焼豚。
絶妙な味付けと火入れで仕上げられており、脂の旨みと甘みがしっかり感じられる。
粒マスタードが添えられているが、そのままでも十分に味わい深く、ひと切れごとに満足感が広がる一皿だ。
北京ダック
こちらも「中華 大しげ」の定番、北京ダック。
甘みのある甜麺醤とカレー風味のソースが添えられ、唐津産のピーマン、玉ねぎ、パイナップルが彩りを添える。
皮はパリッと香ばしく、中はジューシーで肉の旨みがしっかり。
異なる風味のソースと地元の野菜のフレッシュさが、ひと口ごとに変化をもたらし、飽きることなく楽しめる一品だ。
フカヒレスープの茶碗蒸し(サンラータン仕立て)
透明感のあるスープで仕立てられた中華風茶碗蒸し。
ふんわり柔らかな卵のなかに、フカヒレの繊維がしっかり感じられる。
酸味と辛味を効かせたサンラータンの味わいがアクセントとなり、ひと口ごとに味が変化していく。
食べる前に軽く混ぜ合わせて、自分好みの味のバランスを楽しめる一皿。
唐津産太刀魚の蒸しもの
唐津産の太刀魚を蒸し上げた一品。
新蓮根とともに、下には春雨が敷かれている。春雨には蒸した太刀魚から染み出た旨みたっぷりの出汁が染み込み、味わいに深みを加えている。
ふんわりとした太刀魚の食感と出汁を吸った春雨のやさしい甘みが重なり、素材の持ち味が素直に伝わってくる。
佐賀牛サーロインの沙茶醤煮込み
佐賀牛のサーロインを中華風すき焼きのスタイルで。
火入れはレアめで、肉の柔らかさとジューシーさが際立つ。
沙茶醤(サーチャージャン)を使ったスープは台湾を思わせるエスニックな香りが漂い、空芯菜、茄子、椎茸などの野菜とともに深い味わいを作り出している。
ひと口ごとにアジアの風情が感じられる、力強くも繊細な一皿。
鰻ととうもろこしの土鍋ご飯
鰻の香ばしい香りと甘みがとうもろこしの甘さと溶け合った土鍋ご飯。
鰻は香ばしく焼き上げられ、粒の立ったご飯とともに丁寧に炊き込まれている。
仕上げにトウチ(豆鼓)ソースを加えることで、まろやかな旨みとコクが全体に行き渡り、香ばしさと甘みが重なり合う。
深い味わいの中にふわりとした甘さが広がり、最後まで飽きずに楽しめる一膳だった。
締めの料理
食事の終盤にふさわしい締めの料理が続く。
バンバンジー冷麺は、しっかりとした味付けのピリ辛タレが麺に絡み、蒸し鶏の旨みとともに食欲をそそる。
中華そばはすっきりとしたスープにネギの爽やかさと焼豚のコクがバランスよく調和し、飲み込むほどに余韻が広がる。
ピリ辛に仕上げた炒飯は香ばしく、ネギと焼豚の旨みが全体に染み渡っている。
これらの締めの一皿が食事の余韻を深め、満足感を最後までしっかりと届けてくれる。
デザート & フィナーレ
黒烏龍茶のかき氷
締めのあとは口の中をさっぱりとさせるデザートが待っている。
黒烏龍茶を使ったかき氷は、ほどよい苦みとミルク金時の甘みが絶妙に絡み合い、後味を引き締めてくれる。
ふわふわの氷にまろやかな練乳と甘さ控えめのあずき、そして白玉が添えられ、食後に軽やかな満足感を届けてくれた。
まとめと感想
唐津の土地の恵みを大切にしながら、シェフとマダムそれぞれが京都の名店で磨いた技術と経験を礎に、料理を丁寧に表現する「中華 大しげ」。
歴史ある質屋の建物を活かした落ち着いた空間は、静かな時間が流れ、訪れる人を穏やかに迎える。厨房ではシェフが集中して料理を仕上げ、マダムは目の前で焼豚を切り分けるなど、二人の役割が自然に調和している。
料理は派手さを追わず、素材そのものの魅力を最大限に引き出すことに真摯に向き合う。季節や土地の香りがふと感じられ、訪れるたびに新たな発見がある。
ふたりの静かな連携と温かな接客は、店の空気をやわらかく包み込み、自然と応援したくなる居場所を作り出している。
ここは素材と技術、人の想いが重なり合い、唐津の食文化の深さを改めて感じさせてくれる特別な一軒だ。
予約とアクセス情報
予約方法
完全予約制で、2名様から受付しています。
予約は電話のみ受け付けており、インスタ公式アカウントでも同様に案内されています。
アクセス情報
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住所:佐賀県唐津市坊主町552-5 離れ
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最寄り駅:JR唐津線・唐津駅北口から徒歩約9~10分(およそ640〜680メートル)
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バス利用の場合:福岡方面から昭和バス「唐津号」で「大手口唐津バスセンター」下車、徒歩約7分
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駐車場2台あり。
この投稿をInstagramで見る営業時間 & 定休日
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ディナー営業のみ:18:00〜21:00(ラストオーダーは未明確)
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ランチ営業は応相談との記載もあり。
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定休日は不定休です。確かな休業日は公式からの確認が必要です。
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