CONTENTS
プロローグ|夜景の向こう、今しか見られない香港と一皿を求めて
パリ、バルセロナ、台北と巡ってきた”50 Best Gastronomic Journey”。 今回向かうのは、香港。
頭に浮かぶのは、ヴィクトリア・ハーバーに滲む夜景と、広東料理の記憶。 英国統治の記憶を残す街並みは、いま少しずつ”中国化”の気配を纏いながら、それでもなお独自の顔を保ち続けているという。 植民地時代に育まれた食文化が、時代の変化の中でどんな一皿を見せてくれるのか。
今回の旅は、ニューヨーク在住のフーディーの友人が企画し、レストランの手配をしてくれた特別な一本。 Asia’s 50 Best Restaurantsの上位常連が並ぶラインナップに、出発前から期待は高まるばかりだった。
出発前に確認した天気予報には、台風のマークが二つ並んでいた。 それでも、旅程を変える理由にはならない。
2泊3日、どれだけの香港に出会えるだろうか。 そんな高揚感を抱えたまま、福岡空港へと向かった。

Gastronomy Journey|Day 1
福岡 → 香港:旅の始まり
出発の朝、福岡空港に到着。 これから始まる数日間への高揚感を抱えながら、まずは保安検査へと向かう。




リニューアルされたフードコートで腹ごしらえ
保安検査を抜けた先には、リニューアルされたばかりの新しいフードコート「HAKATA FOOD HALL」が広がっていた。 木の温もりを感じる内装に、免税店エリアにはPORTERやSK-Ⅱといった見慣れたブランドの店構え。 これまでの福岡空港とはまた違う、洗練された空気感に少し驚かされる。


うどん、ハンバーグ、うなぎ、天ぷら、もつ鍋、とんかつ、ラーメン……。 選択肢の豊富さに目移りしながら選んだのは、「釜喜利うどん」。
注文したのは肉ごぼう天うどん。 甘辛く煮込まれた牛肉と、香ばしい牛蒡天がたっぷり乗った一杯。 出汁の効いたつゆに、旅の始まりの実感がじんわりと染みてくる。

さらに、隣の「竹乃屋」で鶏皮串も追加。 カリッと焼き上げられた鶏皮は、これだけでビールが進みそうな一本。 搭乗前の腹ごしらえとしては、贅沢すぎるくらいの内容になった。


搭乗ゲートへ
腹ごしらえを終えて、搭乗ゲートへ。 モニターに表示されていたのは「香港」の文字と、UO601便・12:55発の案内。 HK Expressの単独便でありながら、キャセイパシフィックとのコードシェア便でもあるらしい。


福岡から香港までは、直行便でおよそ3時間半。 LCCということもあり機内食はなし。 軽い気持ちで、いよいよ香港へ向けて飛び立った。
香港国際空港に到着
現地時間の午後、無事に香港国際空港へ到着。 到着エリアには、大きく輝く「100」の文字。 どうやら香港国際空港の開港100周年を記念した展示だったようで、思いがけず節目のタイミングに立ち会えたことになる。


到着ロビーを抜けて、これから香港の街へ。 入境検査を終えたあとの高揚感は、何度旅をしても変わらない。

両替を済ませて市内へ
まずは市内へ移動する前に、両替を済ませておくことに。 台北編での”両替不足トラブル”の反省を活かして、今回はしっかりめに両替。 手にしたのは、香港らしいライオンの意匠が入ったHKD500紙幣。

エアポートエクスプレスで香港駅へ
空港からは、エアポートエクスプレスに乗り込み市内へ。 車窓には九龍の高層ビル群と、その向こうに広がる海。 静かな車内で、これから始まる香港での時間に思いを馳せる。



思いがけずPOP MARTの自販機と遭遇
香港駅で下車し、最初の目的地へ向かって歩いていた道すがら。 ふと目に入ったのが、黄色い筐体の「POP MART ROBO SHOP」。 当時ちょうど話題になっていた”ラブブ”が買えるかもしれない、という淡い期待を胸に、よくわからないまま挑戦してみることに。


結果、出てきたのは「ロマンチック・リングボックス」。 やっぱりラブブではなかったけれど、これはこれで香港らしい寄り道になった。 旅の初日から、小さなガチャ運を試された格好。

老舗「一樂燒鵝」でローストグースのランチ
香港らしい急な石段の市場エリアを抜け、赤い旗がはためく商店街を通り抜けた先。

たどり着いたのは、1957年創業、ミシュラン一つ星を長年守り続ける老舗「一樂燒鵝(Yat Lok Restaurant)」。

20を超える工程を重ねて焼き上げるという「燒鵝(ローストグース)」で知られる名店で、店先にはガラス越しに吊るされた燒鵝の姿。 炭と脂の混じった香ばしい匂いが、通りにまでふわりと漂っていた。

店内は狭く、相席が当たり前の庶民派スタイル。 壁一面に貼られたピンクのメニュー表を前に、正直なところ、漢字だらけで内容がよくわからないまま単品を注文。 あとで振り返ると、どうやらセットメニューの方がお得だったらしいと気づくのはいつものこと。 これもまた、旅先での小さな失敗のひとつ。

運ばれてきたのは、半隻のローストグースと白飯。 皮はパリッと香ばしく、肉は脂の旨みが深い。 少し値は張ったけれど、食べ終えたあとの満足感はしっかりと残った。 観光の途中に立ち寄るというより、”この一皿を食べに行く”ための店。香港での燒鵝なら、ここを選んで間違いないと思う。

THE PARK LANE HONG KONGにチェックイン
ランチを終えて向かったのは、この日の宿「THE PARK LANE HONG KONG(柏寧酒店)」。
Autograph Collectionの一員だけあって、エントランスからすでに洗練された佇まい。

チェックインを済ませ、案内されたのは1522号室。 部屋タイプはデラックスルーム、キングベッド、シティビュー。 窓の外には香港の街並みが広がり、旅の拠点としては申し分のないスタートとなった。

部屋に荷物を置いたところで、道中で手に入れたPOP MARTの戦利品を早速開封。 やっぱり中身はラブブではなかったけれど、そのゆるさもまた旅の思い出。
尖沙咀の夜景を歩く:ヴィクトリア・ハーバーへ
ホテルで一息ついたあとは、MTRに乗って尖沙咀(チムサーチョイ)へ。 目当ては、ヴィクトリア・ハーバー越しに香港島の夜景を望む「シンフォニー・オブ・ライツ」。

この日はあいにくの曇り空。 実はちょうど台風がひとつ通り過ぎたばかりで、もうひとつが近づいてきているタイミングだった。 本来ならきらびやかに輝くはずの摩天楼も、この日は分厚い雲に半分隠れながらの共演に。

スターの大通り(アベニュー・オブ・スターズ)を歩きながら、ブルース・リー像や黄金の子豚の像にも遭遇。 曇り空の下でも、行き交う観光客の熱気は変わらない。


老舗「麥奀雲呑麺世家」で腹ごしらえ
散策のあとに立ち寄ったのは、尖沙咀・ロックロード沿いにある老舗の雲呑麺専門店「麥奀雲呑麺世家(Mak’s Noodle)」。 1920年代に広州で”雲呑麺の王”と呼ばれた初代の味を受け継ぎ、いまも伝統の製法で一杯を仕上げているという。

注文したのは看板の蝦雲呑麺。 澄んだスープに細麺、弾力のある海老雲呑。 小ぶりな碗の中に、香港らしい旨味の層がきちんと収まっている。 食べ歩きにもほどよいサイズで、観光地の中心にありながら味づくりの芯は変わらない、”香港の原点”を体現するような一杯だった。

雲呑麺で小腹を満たしたあと、次の店へ向かう道すがら。 “ラブブ”を求めて探し当てたのは、「POP MART 奧海城店」。 店内は熱気に満ちていて、次々と商品を手に取る人の波。

ずらりと並んだフィギュアやキーホルダーを眺めながら、結局また手が伸びてしまったのは”ラブブ”がらみの一箱。 自販機に続いて、この日2度目のPOP MARTになった。

2軒目は地元食堂「興記菜館」へ
雲呑麺で小腹を満たしたあとは、もう一軒。 プラスチックのビニールカーテンに覆われた、いかにも地元感の漂う食堂「興記菜館(Hing Kee Restaurant)」へ。

注文したのは、石鍋仕立ての牛肉飯。 半熟の目玉焼きと刻みネギがたっぷり乗った、香港らしい家庭の味。

ほかにも、干し唐辛子がぎっしり乗った香港式の唐揚げや、空心菜炒め、青菜のかき揚げなど、次々と料理が並ぶ。 実はこのあたりで、カメラかSDカードの調子が悪くなり、写真がうまく撮れていない一幕も。 それも含めて、香港らしい賑やかな一夜として記憶に残った。



冷えたホガーデンで乾杯しながら、この日一日の香港をゆっくりと振り返る時間になった。
台風接近の夜、開封タイムで一日を締めくくる
食事を終え、ホテルへ戻る道すがら立ち寄ったのは、ホテルのすぐそばにあるドリンクスタンド「MR.TEA(茶先生)」。 黒いカイゼル髭のロゴが目印の香港らしいティースタンドで、壁一面にずらりと並んだメニューから一杯をテイクアウト。

ホテルの部屋に戻り、この日最後のイベントは、香港で買い集めたPOP MARTの戦利品を並べての開封タイム。 ベッドの上に並んだのは4つの箱。 ラブブシリーズが2箱、ワンピースとコラボした「THE MONSTERS ONE PIECE」、そして「THE MONSTERS Wacky Mart」。 気づけば一日で、これだけの数を買い集めていたことになる。

この日の香港は、1つの台風が通り過ぎ、もう1つの台風が近づいてくるタイミング。 雨こそ降っていなかったものの、窓ガラスにはびっしりと結露が浮かんでいた。
台北編に続き、思いがけないハプニングも含めて、香港らしい湿度と熱気を全身で感じた一日。 明日はいよいよ、この旅のメインイベントが待っている。
Gastronomy Journey|Day 2
朝ごはんを求めて
DAY2の朝は、ホテルのあるエリアから地下鉄で移動するところから始まる。 香港のMTRは、エスカレーターのスピードが日本よりも明らかに速い。 慣れない旅行者にとっては、乗るタイミングすら一瞬迷うくらいのスピード感で、思わず笑ってしまう洗礼だった。

上環方面へ向かう車内から降り立つ
上環「生記粥品専家」で腹ごしらえ
目的地は、路地裏にひっそりと佇む老舗の粥専門店「生記粥品専家(Sang Kee Congee Shop)」。 もとは屋台から始まった店で、いまも銅鍋で一杯ずつ丁寧に仕上げる、昔ながらの手法を守り続けているという。 ミシュラン・ビブグルマンにも掲載される、香港の粥文化を象徴する一軒だ。

壁に貼られたメニュー表は種類も豊富で、値段も庶民的。

注文したのは「及第粥(小)」と「香煎魚餅」。 及第粥は、レバーやモツ、肉団子などの具材がひと椀に詰まった、まさに”総合版”のような一杯。 米が完全にほどけるまで炊かれた粥底は、匙を入れるととろりと流れる。

具材はそれぞれちょうどいい火入れで、レバーはやわらかく、モツは歯ざわりを残しながらも臭みがない。

一緒に添えられた薑葱豉油(生姜ねぎ醤油)を少しつけると、淡い粥に香ばしさと塩気が重なって味が締まる。

香煎魚餅は外が香ばしく、中はふわりとした食感。魚の甘みがしっかりとあり、粥と合わせると食感の対比が心地よい。 シンプルだけれど、真っ当に美味しい朝食になった。

この日のメイン、広東料理の到達点、The Chairmanへ
朝食を終えて一旦ホテルへ戻り、少し休んでから中環方面へ。 工事の足場と幕に覆われたビルが並ぶQueen’s Road Centralを歩いていく。

たどり着いたのは、ウェリントン街198番地のビル「The Wellington」3階に構える「The Chairman(大班樓)」。
輸入食材に頼らず、香港近海で獲れる素材や地元生産者との関係を大切にしながら、熟成や発酵といった時間の要素を重ねる広東料理店。 オーナーのDanny Yip(葉志明)氏が掲げるのは「最良の素材」「最適な調理法」「最も自然な調味」というシンプルな哲学。派手な演出を避け、素材そのものの味わいを最も純粋な形で引き出すことに徹している。

派手な演出はないのに、香りと温度の重なりだけで満足感を積み上げていくような時間だった。 素材そのものの味わいに真っ直ぐ向き合う、その哲学が一皿ごとにしっかりと伝わってくる。
香取慎吾のウォールアートを訪ねて
ランチを終えて向かったのは、香取慎吾さんが手がけたウォールアート。 「BUT NICE」の看板を横目に、坂の続く通りを進んでいく。

香港特有の急な階段坂を登っていくのはなかなか大変で、息が上がる。 たどり着いたShelley Street(些利街)の壁面には、龍や香港の街並みをモチーフにした鮮やかなウォールアートが広がっていた。

ホテルで一休みしてから、ヴィクトリア・ピークへ
一旦ホテル「THE PARK LANE」へ戻り、少しゆっくりする時間を挟む。
体力を整えたところで、再び中環方面へ。 Peak Tram、Hong Kong Park方面への案内板を頼りに進んでいく。

中環の交差点には、Peak TramやCentral Stationへの案内標識がいくつも重なっていた。

「THE PEAK TRAM」の入口へ到着。

QRコードで入場し、行列に並んで乗車を待つ。

多くの観光客とともに列に並び、いよいよトラムへ。

トラムの車窓から見える景色は、登るにつれてどんどん高くなっていく。
展望台から望む香港の夜景
ヴィクトリア・ピークの展望台に到着した頃には、空はちょうど夕暮れから夜へと変わるタイミングだった。

大勢の観光客とともに、ヴィクトリア・ハーバーを見下ろす。 高層ビル群の明かりが少しずつ灯り始め、雲の切れ間から香港の街が姿を現す。

すっかり日が暮れると、摩天楼が一面に輝く、香港らしい夜景が広がった。
% ARABICAとSilk.でひと息
展望台で夜景を堪能したあとは、ピークタワー内の「% ARABICA」でコーヒーをテイクアウト。


シンプルな%マークのカップを片手に、少し休憩。 帰り道には、ネオンサインの目立つミルクティー専門店「Silk.」にも立ち寄った。

路地裏の余白、Neighborhoodへ。
ピークから下りたあと、バスの乗り方がわからず、Uberもなかなか捕まらない。 結局、歩いて向かうことに。
坂と階段が続く道のりはなかなかの体力勝負で、ネオンサインの効いた通りを抜けながら進んでいく。

グラフィティに彩られた路地裏の石段を上り下りしながら、Hollywood Road裏路地の奥へ。 たどり着いたのは、隠れ家的なモダンビストロ「Neighborhood」。

フレンチを軸に、アジアや地中海の要素を織り交ぜたシェフ・David Lai氏の一軒。コースではなく小皿を自由に組み合わせるスタイルで、塩釜焼きチキンや北海道キンキのパエリアといった予約必須の名物大皿料理でも知られる。ミシュラン一つ星、Asia’s 50 Best Restaurants選出歴を持ちながらも、地元の料理人たちが休みに通うという、肩肘張らない空気が魅力の店だという。
コースの詳細は、別記事にまとめている。
カジュアルな空気の中にも、確かな技術に裏打ちされた一皿一皿があった。 派手さはないのに、香りと温度の設計だけでしっかり満足させてくる。日常の延長に上質がある、そんな感覚が心地よかった。
公園の犬たちとの遭遇
お店を出ると、目の前の公園にわんちゃんたちの姿が。 チワワと大型犬という組み合わせで、思わず足を止めてしまう。 香港なのに、聞こえてきたのはなぜか日本語の名前だったのがちょっとおかしかった。

夜の坂道を歩いてホテルへ戻り、この日を締めくくる。

明日はいよいよ、この旅の最終日。
Gastronomy Journey|Day 3
最終日、チェックアウト前にもうひと目的地
いよいよ最終日。 チェックアウト前に、どうしても行っておきたい場所があった。
MTRに乗り込み、柴湾方面(1番線)へ。 車内の路線図を指でなぞりながら、目的の駅までの道のりを確認する。


モンスターマンションへ
改札を抜けて地上へ出ると、香港らしい高層団地とバス、トラムが行き交う通りが広がっていた。

団地の谷間を歩いていくと、色とりどりの傘を掲げた屋台や、山の緑を背にしたバス停の風景に出会う。

そして、たどり着いたのは、三角形に湾曲した独特のフォルムを持つ、通称「モンスターマンション」。

中に足を踏み入れると、見上げた先には空を切り取るようにびっしりと詰まった無数の窓とエアコンの室外機。 香港の人口密度の極限を、まさに体感するような光景だった。
ホテルへ戻る途中、現地のマクドナルドで小腹を満たす
モンスターマンションを見学したあと、ホテルへ戻る道すがら。 朝が早すぎたせいか、小腹が空いてしまい、現地のマクドナルドへ立ち寄ることに。
店先にはベンチに腰掛けるドナルドの像と、大きな金色のMマーク。

セルフオーダー機の画面には、日本でも人気の「マックグリドル」の案内。 香港でも変わらぬ人気メニューらしい。

軽食をテイクアウトし、ハンバーガーの層をモチーフにした柱を横目に、ホテルへの帰路につく。
最終日にして、ようやくの快晴
ホテルの部屋に戻ると、窓の外には最終日にしてようやくの快晴が広がっていた。 台風続きだったこれまでとは一転、ヴィクトリア・パークの緑からハーバーまで、見通しのいい景色。


これまでの数日間、曇り空や台風に見舞われ続けていただけに、最後の最後に見せてくれたこの青空は、ちょっとした帳尻合わせのようにも感じられた。
チェックアウトして最後の目的地へ
荷物をまとめ、スーツケースを引いてチェックアウト。
最後の目的地は、中環にある老舗茶楼「蓮香樓(Lin Heung Tea House)」。
中環「蓮香樓」で朝の飲茶
100年を超える歴史を持つ蓮香樓は、いまもワゴン式点心のスタイルが残る、香港でも数少ない一軒。
プーアル茶を頼み、湯気の立つ蒸籠を追いかけながら、叉焼包、蝦餃、焼売、腸粉、牛肉焼売を次々に注文していく。

どれも派手さはないけれど、蒸気と香りに包まれた瞬間の”出来たて”こそがご馳走。 客の声とワゴンの音が混ざり合う店内には、古き香港の時間がそのまま流れているようだった。 伝統が形だけでなく、日常として今も息づいている場所。旅の最後の食事として、これ以上ないくらいふさわしい一軒だった。
エアポートエクスプレスで空港へ
飲茶を終え、エアポートエクスプレスに乗り込み、いよいよ空港へ。 「香港」の文字が見える駅のホームで、旅の終わりを実感する。

車窓には、晴れ渡った空と緑豊かな街並みが流れていく。
空港のPOP MARTで最後のラブブチャレンジ
空港に到着すると、出発ロビーには黒い大きなラブブのモニュメントが出迎えてくれた。 HKG、JFK、PVGなど、世界の空港名がプレートで散りばめられている。

最後の望みをかけて、空港内の「POP MART」へ。

結局、お目当てのラブブは当時あまりに入手困難で、最後まで手に入れることはできなかった。 旅の最初から最後まで、ちょっとしたガチャ運を試され続けた5日間。 それもまた、香港らしい思い出のひとつになった。
台風あり、坂道あり、モンスターマンションあり。 密度と熱気に満ちた香港での日々は、こうして幕を閉じた。
エピローグ|一杯の粥から、世界一の一皿まで。
2泊3日、香港のガストロノミーを追いかけた旅だった。
Asia’s 50 Best Restaurantsの「The Chairman(大班樓)」。 広東料理の本質を見つめ、発酵や熟成を重ねながら素材の声を静かに引き出す、香港を代表する一軒。 のちに発表された2026年版のランキングでは、この「The Chairman」が5年ぶりに1位へ返り咲き、同じく香港の「Wing」が2位につけることになる。 香港1・2フィニッシュ。あの一皿に感じた確かな手応えは、間違いではなかったのだと、あとになって答え合わせをしたような気分だった。
そして、Hollywood Road裏路地の「Neighborhood」。 フレンチを軸にしながら地中海やアジアの要素を軽やかに織り交ぜる、”余白のある料理”。 カジュアルで自由でありながら、料理の精度は確かだった。
世界に名を連ねる2軒だけが、この街の実力ではない。 一樂燒鵝のローストグース、麥奀雲呑麺世家の蝦雲呑麺、生記粥品専家の及第粥、蓮香樓のワゴン式点心。 100年を超える老舗の一杯にも、同じだけの矜持があった。 世界基準の一皿と、路地裏の一杯。その振れ幅の大きさこそが、香港という街の食の奥行きだったと思う。
英国統治の記憶を残す街並みは、”中国化”の気配を纏いながらも、雑多でエネルギッシュな今の顔をまだ保っていた。 坂道と階段だらけの地形、団地の密度、すれ違う人の多さ。歩くだけで体力を奪われる街だったけれど、その分だけ、路地裏で出会う一皿の記憶が濃く残った。
次はどの街で、どんな一皿に出会えるだろうか。
- TAGS


