BISHOKU QUEST

旅先で出会った、心に残るひと皿を

『BISHOKU QUEST』は、日本各地の美食を求めて旅をするグルメブログです。
シェフのこだわりや地元食材の魅力、料理の背景にある物語を、写真と共に丁寧に綴ります。

BACAR(バカール) について

コンセプト

BACAR OKINAWAは、薪窯で焼き上げるナポリピッツァを軸に据えながら、前菜やパスタまで含めて一皿一皿を丁寧に組み立てるイタリアン。ピッツァ専門に寄せすぎることなく、食事としての流れやワインとの相性まで視野に入れた構成が特徴です。
また、沖縄の食材を無理に前面に出すのではなく、料理の中で自然に使い分ける姿勢もこの店らしさのひとつ。さらに、マグロの未利用部位を活かした沖縄産ボッタルガの取り組みなど、厨房の外にも料理人としての視点を広げ、素材の価値をきちんと使い切ろうとする姿勢が店の背景にあります。

シェフについて

BACAR OKINAWAを手がける仲村大輔シェフは、1977年に那覇市で生まれた料理人。24歳のときに半年間イタリアへ滞在し、その際に訪れたナポリで食べたピッツァに強く惹かれたことが、現在につながる原点になっています。帰国後、東京でさまざまな店を食べ歩く中で、中目黒の「SAVOY(現・聖林館)」のピッツァに衝撃を受け、店主の柿沼進氏に自ら弟子入りを志願。沖縄から改めて手紙を送り、修業の機会を得ました。

SAVOYでは約5年間にわたってピッツァを学び、三宿店や麻布十番店の立ち上げにも携わった後、2008年に故郷の那覇でBACARをオープン。イタリアで出会ったナポリピッツァと、東京で培った技術を沖縄へ持ち帰り、自身の店として形にしていきました。

仲村シェフがピッツァで特に重視しているのが、生地と火。本人のプロジェクト紹介でも、ピッツァづくりは生地の発酵や窯の火入れなど、日々状態が変わるものと向き合う仕事だと説明しています。BACARの原点でもあるマルゲリータとマリナーラを通して、シンプルな構成だからこそ生地や焼きの違いが伝わるピッツァを追求してきました。

一方で、仲村シェフの活動はピッツァだけにとどまりません。過去には鉄作家や芸術大学の関係者、BACARのスタッフとともに移動式の薪窯を製作し、音楽フェスなどの屋外イベントで最大500枚のピッツァを焼くなど、食を軸にした活動も行ってきました。

こうした活動を続ける一方で、仲村シェフのピッツァは海外からも評価されています。2023年の「The Best Pizza Awards」では世界33位に選出され、2024年は58位、2025年は49位、2026年は56位と、4年連続で世界トップ100にランクイン。2026年のランキングでは「Daisuke Nakamura – Bacar」として56位に選ばれています。

レストランの評価

BACAR OKINAWAは、那覇のレストランシーンの中でも、ピッツァの実力で評価を積み重ねてきた店として知られています。
食べログでは「ピザ百名店」に複数年選出されており、一過性の話題ではなく、安定したクオリティが継続して評価されていることが分かります。薪窯で焼き上げるピッツァの完成度は、沖縄県内にとどまらず、県外から訪れる食べ手にも支持されてきました。

レビューでは、ピッツァそのものの完成度に加え、前菜やワインを含めた食事としてのバランスに言及する声が多く見られます。ピッツェリアでありながら、単品勝負に終わらず、コースのように流れを意識した食体験が評価につながっている印象です。一方で価格帯について触れる声もありますが、それも含めて「きちんとした食事をしに行く店」として受け止められているように感じられます。

観光客の多い那覇にあって、ローカルと旅行者の双方から支持され続けている点も、この店の評価を裏付ける要素のひとつ。受賞歴に頼りすぎることなく、日々の営業で積み上げてきた信頼が、そのまま数字と評価に反映されているレストランです。

ダイニングプレリュード

外観・エントランス

BACAR OKINAWAの外観は、那覇・久茂地の街並みに自然と溶け込む落ち着いた佇まい。通りに対して主張しすぎることはなく、初めて訪れると少し意識して探す必要があるかもしれませんが、その控えめさがこの店のスタンスをよく表しています。

エントランスに近づくと、店内の様子を過度に見せない造りになっており、扉を開ける瞬間に空気が切り替わる感覚があります。外の喧騒から一歩引き、食事に集中するための余白をつくるような入り口です。看板や装飾も必要最低限で、料理と空間そのものに意識を向けさせる設えになっています。

那覇の中心地にありながら、いわゆる観光向けの賑やかさとは距離を保ち、「食べるために足を運ぶ店」であることが、外観とエントランスからも静かに伝わってきます。

ダイニングスペースについて

BACAR OKINAWAのダイニングは、入店してまず薪窯の存在を感じる造り。厨房と客席の距離が近く、焼きの音や温度感がそのまま伝わってきますが、騒がしさはなく、全体としては落ち着いた空気が保たれています。

テーブル配置は詰め込みすぎず、食事と会話に集中できる間合い。木を基調にした内装は温かみがありつつも過度な装飾はなく、料理の邪魔をしないトーンに整えられています。ワインボトルが視界に入る配置も、この店が“ピッツァ屋”で終わらない理由を静かに補足しています。

スタッフの動線もよく考えられており、料理が運ばれるテンポや目配りに無理がない。肩肘張らずに過ごせる一方で、食事の時間をきちんと成立させてくれる空間で、那覇の街中にありながら、自然と腰を落ち着けて食事に向き合えるダイニングです。

今回はシェフがピッツァを作り上げる工程を最も近くで見られるカウンター席に着席。生地を伸ばすところからトッピング、薪窯へ入れ、焼き上がるまでの一連の流れが視界に収まります。

手元の動きは驚くほど無駄がなく、作業は終始一定のリズム。火の入りを確認する視線や、窯の前に立つ時間の長さからも、焼きに対する集中力が伝わってきます。言葉での説明は多くありませんが、仕上がりを見れば、その工程がすべて必要なものだと理解できる。

客席でありながら、どこか仕込み場に立ち会っているような距離感。それでも緊張感が勝ちすぎることはなく、食事としての心地よさはきちんと保たれています。ピッツァが看板である理由を、味だけでなく、工程そのものから納得させてくれる席です。

メニュープレゼンテーション

BACAR OKINAWAの現在のメニューはコースのみ。この日の内容を見ると、ピッツァを主軸にしながら、前後の料理で無理なく流れを組み立てた構成になっています。

コースの立ち上がりは、マルゲリータから。イタリア産フレッシュモッツァレラを使った、ごくシンプルな一枚で、まずは生地と焼き、その店の基準をはっきり示す意図が感じられます。最初にこれを出すことで、以降の料理の見え方が揃う。

その後、熊本産の苺とストラッチャテッラ、県産ヤギのローストハムといった前菜が続き、温度や要素を一度落ち着かせる流れ。軽さとコク、塩味の使い分けが明確で、再び薪の料理へ戻るための間をつくっています。

中盤には、イタリア産冬トリュフのピッツァ、マリナーラ(青森・田子産にんにく、オレガノ)と、方向性の異なるピッツァが段階的に登場。具材の強さではなく、生地と火入れを軸に、それぞれの役割がはっきりした並びです。

合間には、北海道産鱈の白子のブランチャや、やんばるあぐー肩ロースの炭火焼きなど、薪・炭火という共通項を持つ料理が挟まれ、コース全体に一体感が生まれています。メインは選択制で、県産山羊の煮込みや冬トリュフのオムレツ、追加で熟成黒毛和牛サーロインも用意され、食べ手に委ねる余白も残されています。

最後は本日のデザートで締め。マルゲリータから始める構成によって、ピッツァが単なる名物ではなく、この店の基準であることが明確に伝わるコースです。

実際に味わった料理

ピッツァ マルゲリータ

この日の一皿目は、ピッツァ マルゲリータ。
イタリア産のフレッシュモッツァレラを使った、ごくシンプルな構成です。

シェフの合図と同時にお皿に置かれ、間を置かずその場でカット。焼き上がりから提供、ナイフが入るまでの一連の動きが目の前で完結します。最初にまずはマルゲリータを、という明確な意図が感じられる出し方でした。

口に運ぶと、生地の軽さと小麦の香り、トマトの酸味、溶けたモッツァレラの乳のコクが一直線に伝わってくる。具材の印象を重ねるというより、焼きと生地を基準として味を確認させるような一枚です。
縁の立ち上がりや火の入り方も素直で、余計な主張はなく、最初の一皿としてコース全体の基準を示す役割をしっかり果たしています。

このマルゲリータを最初に食べることで、この店がどこを大切にしているのかが、説明なしに伝わってくる。そんな導入として印象に残る一枚でした。

熊本産 苺のストラッチャテッラ

マルゲリータのあとに続いたのが、熊本産の苺とストラッチャテッラ。
温度と要素を一度落ち着かせる役割を担う、シンプルな前菜です。

瑞々しい苺の酸味に、ストラッチャテッラの乳のコクと温度が重なり、甘さに寄りすぎないバランス。オイルは控えめで、素材そのものの輪郭を邪魔しません。苺の果汁が皿に広がることで、口に運ぶたびに味の表情が少しずつ変わっていくのも印象的でした。

ピッツァのあとにこの一皿が入ることで、口の中がリセットされ、次の料理へ自然につながる。強い印象を残そうとする前菜ではなく、コース全体の流れを整えるための一皿として、きちんと機能している構成です。

県産ヤギのローストハムと野菜

続く一皿は、県産ヤギのローストハムに、焼いたり茹でたりと火入れを変えた野菜を添えた構成。説明を聞く前に口に運んでまず感じるのは、ヤギ特有の匂いがまったく立たないことでした。

聞けば、発酵させた飼料で育てられたヤギを使っているとのこと。その背景を知ると、香りの澄み方や脂の軽さに納得がいきます。肉質はしっとりとしていて、噛むほどに旨みがにじむ。いわゆる「ヤギ料理」の先入観を、静かに更新するような味わいです。

添えられた野菜も、ただの付け合わせではなく、火入れの違いで食感と甘みを整理する役割。肉の旨みを受け止めながら、口の中を重くしすぎない。
派手な皿ではありませんが、素材の選び方と扱い方で印象を変える、バカールらしい一皿でした。

イタリア産 冬トリュフのピッツァ

続いて登場したのが、県産マッシュルームとイタリア産冬トリュフのピッツァ。焼き上がったピッツァがカウンター越しに置かれ、そこから目の前でトリュフを削って仕上げられます。

火を入れすぎないタイミングで削られることで、トリュフの香りが立ち上がり、生地の熱と溶けたチーズに一気に溶け込む。香りは強いですが、決して押しつけがましくなく、ベースになっているマッシュルームの土っぽさと自然につながっています。

マルゲリータで基準を示したあとにこの一枚が来ることで、香りの使い方や素材の重ね方の違いがはっきりと分かる。生地と焼きはあくまで同じ軸にあり、その上でトリュフという素材をどう活かすかに集中している印象です。

派手さはありますが、主役はあくまでピッツァそのもの。目の前で削る演出も含めて、香りがピークの瞬間をきちんと食べさせるための、理にかなった提供でした。

北海道産 鱈の白子のブランチャ

ピッツァの流れの合間に挟まれたのが、北海道産鱈の白子のブランチャ。
火を入れすぎず、表面だけを整えることで、白子特有のクリーミーさをしっかり残した仕上がりです。

合わせているのは、ブロッコリーのピュレとボッタルガ。ブロッコリーの青さとほのかな苦味が白子の甘みを受け止め、そこにボッタルガの塩気と旨みが重なります。いずれも主張しすぎることなく、白子の質感を中心に味が組み立てられている印象でした。

脂のある食材を扱いながら、後味は重くならない。薪の料理が続くコースの中で、口の流れを整え、次の一皿へ自然につなぐ役割を果たす料理です。

ピッツァ マリナーラ

コース後半に登場したのが、ピッツァ マリナーラ。
チーズを使わない分、にんにくとトマト、オレガノの輪郭がはっきりと立つ一枚です。

使われているのは青森・田子産のにんにく。焼き上がりの段階で、香りが一気に立ち上がり、そこにセミドライトマトを合わせて食べるよう勧められます。生に近い強さではなく、火入れと油で旨みを引き出したにんにくで、いわゆる刺激的な辛さとは違う、深く残る香り。

一口目からしっかりにんにくが主張しますが、重さは意外と残らない。トマトの酸味と生地の軽さが受け止め、最後までテンポよく食べ進められます。
スペシャリテと呼ばれる理由も納得で、ピッツァ屋としての芯の強さを、そのまま味で示すような一枚でした。

やんばるあぐー肩ロースの炭火焼き(ポルチーニソース)

メインの一皿目は、やんばるあぐーの肩ロースを炭火で焼き上げた料理。
皿に置かれた瞬間に分かるのは、脂の量ではなく、火入れの落ち着きです。

肩ロースらしい適度な脂身はありますが、重さはなく、噛むとすっと溶けていく。炭火の香りは前に出すぎず、肉の旨味を輪郭づける程度に留められています。ポルチーニのソースはコクがありながらも粘度は控えめで、豚の甘みを覆い隠さない。

付け合わせも含めて、構成はシンプル。ただ、その分、素材と火入れへの自信がはっきり伝わってきます。
ピッツァが主役のコースでありながら、肉料理としてもきちんと印象を残す一皿でした。

イタリア産 冬トリュフのオムレツ

メインの選択肢のひとつが、イタリア産冬トリュフのオムレツ。
この店では定番として知られる一皿です。

火入れはごく短く、中心は半熟に近い状態。卵そのものの甘さと温度を残したまま、仕上げにトリュフをたっぷり削りかけて提供されます。香りは強いですが、卵の輪郭を押し潰すことはなく、むしろ余白を広げるように作用している印象。

トリュフを使った料理でありながら、主役はあくまで卵。
素材の力に寄りかかるのではなく、火入れとタイミングで成立させているからこそ、定番として選ばれ続けている理由が分かります。

ピッツァが軸にあるコースの中で、このオムレツを選ぶことで、香りのピークを別の角度から体験できる。そんな位置づけの一皿でした。

メニュー外・追加のパスタ(お出汁の卵麺)

コースの最後に勧めてもらったのが、メニューには載っていない追加のパスタ。
具材は足さず、お出汁と卵麺だけという、驚くほどシンプルな構成です。

澄んだ出汁に卵麺のコクが溶け込み、味は穏やかですが、輪郭ははっきりしている。油脂や香りで押すのではなく、温度と塩加減、麺の質感だけで成立させています。ここまでピッツァや肉料理を重ねてきたあとでも、負担なく入ってくる軽さ。

料理を足すというより、食事をきれいに終わらせるための一杯。
メニューに載せない理由も含めて、この店の引き算の感覚がよく表れたパスタでした。

デザート & フィナーレ

デザート2種 バジルのアイス/マスカルポーネのコーヒー

食事の締めは、デザートが二種。
甘さで押し切らず、ここまでの流れをきちんと受け止める構成です。

ひとつはバジルのアイス。香りは立っていますが、清涼感に寄りすぎず、ハーブの青さとミルクのコクが穏やかに重なります。口の中を一度リセットするような役割で、余韻をきれいに整えてくれる一品。

もうひとつは、マスカルポーネのコーヒー。中はクリーム状のマスカルポーネで、外側をコーヒーゼリーで包んだ構成です。ほろ苦さと乳の甘みのバランスがよく、食後に自然と手が伸びる軽さ。

最後まで重たさを残さず、香りと温度で終わらせる。
ピッツァを軸にしたコースらしい、余白のあるデザートでした。

まとめと感想

カウンターで見ていると、シェフの動きには独特のリズムがあり、その積み重ねからピッツァが生まれていることが分かります。生地を触る時間、火を見る間合い、仕上げのタイミング。その一連の流れ自体が、この店の世界観を形づくっていて、気づけば自然と引き込まれていく。

現在はコースのみの構成になったことで、ひとりでも複数のピッツァや料理を無理なく楽しめるようになりました。同時に、シェフ自身も定番にとどまらず、さまざまなピッツァに挑戦できる余地が生まれている。その変化が、料理の内容にもはっきりと表れています。

料理の完成度はもちろんですが、記憶に残るのは人柄や空気感。シェフを中心としたこの場の雰囲気に惹かれて、世界中から人が訪れるという話にも納得があります。
沖縄・那覇を語るうえで、いま欠かせない一軒です。

予約とアクセス情報

那覇・久茂地の「BACAR」は、現在コースのみ・完全予約制に近いスタイルで営業しており、予約はオンラインから行うことができます。公式の予約ページでは、17:00スタートの回と19:30スタートの回が用意されており、現在のおまかせコースは税込13,200円。料理はコースのみで、来店時間に遅れると一部料理が提供できない場合があるため、時間には余裕を持って訪れるのがおすすめです。

予約はTableCheckの予約ページから。電話での問い合わせ・予約にも対応しており、店舗電話は098-863-5678です。5名以上の場合は席の都合で対応できない場合があるため、電話での確認が案内されています。

場所は那覇市久茂地3-16-15。ゆいレール県庁前駅から徒歩約5分とアクセスしやすく、国際通り周辺からも訪れやすい立地です。専用駐車場はないため、車の場合は周辺のコインパーキングを利用する形になります。

営業時間は現在、水・木・金・土・祝日の17:00〜19:15/19:30〜22:00の2部制。基本的に日・月・火曜が定休日ですが、不定休もあるため、訪問前にはInstagramの営業カレンダーを確認するのが確実です。

予約ページ:
BACAR 公式予約ページ(TableCheck)

Instagram:
BACAR OKINAWA 公式Instagram

項目 情報
店名 BACAR(バカール)
住所 〒900-0015 沖縄県那覇市久茂地3-16-15
最寄り駅 ゆいレール「県庁前駅」徒歩約5分
電話番号 098-863-5678
予約 オンライン予約・電話予約
オンライン予約 TableCheck予約ページ
料理 おまかせコースのみ
コース料金 13,200円(税込)※掲載確認時
営業時間 水〜土・祝日 17:00〜19:15 / 19:30〜22:00
定休日 日・月・火 ※その他不定休あり
駐車場 なし(近隣コインパーキング利用)
席数 24席(テーブル・カウンター)
Instagram 公式Instagram

※営業時間・料金・営業日は変更される可能性があるため、予約時にTableCheckと公式Instagramの最新情報を確認するのが確実です。

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